アドヴェントについて

クリスマスの祝祭に向けて

大嶋 まり

 クリスマスの祝祭は、1カ月を通して、深い静けさの中に行なわれる一つのプロセスの成就です。人間の魂が好んで自らをゆだねた真夏の溢れる光と熱は、短くなっていく日の長さと共に次第に強くその内に引きこもります。まるで、秋の光と闇が均衡をとろうとしているかのように、一年の中で最も暗い時にこそ、内なる光を灯したいと願うのです。

 では「内なる光を灯す」とは、どういうことなのでしょうか。本当の意味で「クリスマス」を迎えようとするなら、毎年、気持ちを新たにし、私たちが受け取る外的な光を内的な光へと変化させるよう努めなければなりません。そして、その内なる光が、内から外へと輝き出すようにするのです。この努力を行なう人から、恵み豊かに輝き出る、静けさ、愛と温かさを周りの人々は感じ取ることができるでしょう。その人々の魂に届く何く何か……、それがクリスマスが到来し、私たちが祝う「誕生」なのです。

 アドヴェントとは到来です(Advent の語源となるラテン語では、advenire =到着)。それが意味するものは、高貴な神的存在から到来するものと、地上の人間とを結びつけることなのです。私たちは、その結びつけるという試みを毎年この時に、新しい心もちで始めなければなりません。

 私たちが、このような努力を行なうためには内的な静けさが必要です。しかし、大人にとっては日々の生活の中でも、この時期はとても忙しく、このような静かな、自らと向き合う時間を持つ余裕などないかもしれません。でも、子どもたちにとっては、成就する何かに向けて待ち望む日々は大きな喜びです。それは何にも換えがたいものであり、私たちが努力したそのことが私たちと子どもたちをより深く結びつけてくれることでしょう。

Weihnacht
 世界の希望の光が
 魂の目に映し出される、
 精神から発せられる叡智が
 人間の心に語りかける:
 父の永遠なる愛は
 その息子を地上に送り、
 慈愛深く人間の道に
 天の明るさを授ける

Rudolf Steiner

アドヴェント:学園でのあゆみ

木村 義人

アドヴェントという祝祭

 アドヴェント。毎年、冬も近づき風が段々と冷たくなっていく頃、寒くなっていく気温とは別にもうすぐやってくるアドヴェントのことを考えると何故か心は温かくなってきます。青い布、蝋燭とマッチ、星、もみのリース、聖ニコラウスとくるみとみかん、アドヴェント・カレンダー、トランス・パレント、etc……。

 きっとここで育った子どもたちが学校時代を振り返った時も、その記憶の中で静けさと闇の中の光の祝祭・アドヴェントは少なからず大きな位置を占めているでしょう。
 アドヴェントはキリストの誕生と絡んではいますが、闇と光のお祭りはそれよりも何千年もの遥か昔から行なわれ、形をかえてきているものです。これからもこの時期、闇の中の静けさとそこに灯る美しい小さな光を子どもたちの心の中だけではなく、我々大人こそ絶やさずいつまでもしっかり持ち続けていたいと強く願います。

アドヴェントをどう迎えているか?

 では、学園の子どもたちはもちろん、世界中のシュタイナー学校ではこのアドヴェントをどのように迎え、お祝いしているのでしょうか?

 主なものを書くと次のようになります。

① リース作り
② ロウソク作り
③ アドヴェントの庭
④ アドヴェントの集い
⑤ 各学年エポック朝時間におけるアドヴェント時間
⑥ セント・ニコラウス、サンタルチア
⑦ アドヴェント・カレンダー
⑧ 季節のテーブル
⑨ 生誕劇
⑩ メサイヤ・コーラス
⑪ クリスマス

  少し内容を拾ってみましょう。

●蝋燭作り

 アドヴェントの季節が近づくとまず行なわれるのが、闇と光のイベントに欠かせないロウソク作りです。特に低学年では喜びをもってこの蝋燭作りが行なわれます。ロウソクの芯に蜜蝋シートをくるくる巻いていくだけのシンプルなロウソク作りもありますが、学校で行なう大抵の場合はもう少し本格的です。

 教室の真ん中に机を用意し、蜜蝋が入った缶を卓上コンロの上に置きます。歌を歌いながら子どもたちは机の周りを回り、順番に缶の前に来たら熱で溶けた蜜蝋の中に蝋燭紐を垂らして漬け込み、そして引き上げます。すると芯の周りには、夜店でチョコレートに漬け込んだバナナ?のようにうっすら蝋が付いています。歌を歌いながらぐるっと回って次の番が来るまでにはロウは乾いていて、さらに歌を歌いながら机を回り、2回目のディップ、3回目のディップと繰り返していくとロウソクは段々と太くなり、ロウソクらしくなっていきます。

 蜜蝋に浸した後、その都度水の中に漬けて急速に冷やす方法もありますが、水滴が残ったまま次の蝋に浸してしまうと、火をつけた時にバチバチと弾けるようなロウソクになってしまいます。子どもにより太っちょ蝋燭さんや痩せっぽちの蝋燭さんが出来上がりますが、それも個性的で良いものです。自分のオリジナル蝋燭で迎えるアドヴェントは特別ですし、アドヴェントがより待ち遠しくなります。蝋燭の炎はアドヴェントに欠かせないものです。

●クランツ作り

 もうひとつアドヴェントの前にしておかなければならないのがクランツ作りです。各教室でアドヴェントの儀を行なう際にロウソクを4本立てられるクランツをもみの木で作ります。毎年、教員が集まり、ああでもない、こうでもない、と苦労しながらも学校中に飾られるクランツ。「アドヴェントの庭」が行なわれる前の日の夕方に作られ、各教室に飾ります。同じ時間、別の場所では、翌日のため、1年生担任を中心に「もみの木の渦巻き」を作ります。

●アドヴェントの庭

 アドヴェント期間中の実質的な最初の行事となるのは多分、1年生が行なう「アドヴェントの庭」でしょう。

 ほとんどの親御さんは、1年生と共にもう体験済みのことと思います。ただし、藤野に移転して新校舎のオイリュトミー室ができるまでは教室で行なっていたため、保護者の方が参加するスペースが無くて、実際には目にしていない親御さんもいらっしゃるかと思います。または、幼いお子さんのお世話をして、片方の親だけが会場に足を運びお留守番の方もいたことでしょう。

 この「アドヴェントの庭」は大抵は11月の最終土曜日、暗くなり始めた5時半ころに始まります。会場には螺旋状にもみの枝が置かれて渦巻きの道が作られています。そのモミの枝のところどころに子どもの数だけ紙で作った金色の星を置きます。その渦巻きの中心には、蝋燭、ユリの花、動物に関するもの、水晶を飾ります。

 ライアーが厳かに鳴り響く中、最初に担任がりんごロウソクを持って渦巻きの中にゆっくりと入っていきます。真ん中までたどり着くと中央のロウソクの火から自分の持っているりんごロウソクに火を灯し、また渦巻きの中を引き返し、中心に一番近い星型の上に火の灯ったりんごロウソクを置いてきます。児童が先生に倣い、順番にこれを行ないます。最後には子どもの数だけのりんごロウソクがもみの渦巻きの中に置かれ、とても美しい道ができ上がります。内容的には宇宙と人間のあり方を深く示唆しつつも、形は神秘的で美しい印象が子どもにも大人にも残る素敵な行事です。

●季節のテーブル

 教室の中にある季節のテーブルもアドヴェント用のしつらえになります。鉱物、植物、動物、人間。この4つがアドヴェントの4週間のそれぞれのテーマです。

 イエスが生まれるまでのマリアとヨゼフの長い旅。毎朝子どもたちが教室に入ると、ヨゼフとマリアがイエスを生むために少しずつ馬小屋へと近づいていきます。「東方の3賢者」は年を越えた1月に登場しますが、日本はお正月になるために教室で見かけることはあまりありません。

●アドヴェント・カレンダー

 イエスの誕生を楽しみにしながら、一日毎に子どもたちはカレンダーをめくるのを心待ちにしています。毎日闇が増していく中、めくっていくカレンダーがもうすぐ来る光の誕生を心待ちさせてくれます。毎年、異なる美しいアドヴェント・カレンダーが教室に掛けられます。自分たちの手作りオリジナル・カレンダーを制作するクラスもあります。

●アドヴェントの集い

 アドヴェントに入ってから毎週行なわれる集いは4回あります。集会場は薄暗く布で覆われ、静けさと共に子どもたちは会場に入ります。全員が揃うと、その週の数だけ蝋燭に火が灯されます。第1週は1本のロウソクに、第2週目は2本のロウソクに…… という感じです。

 集いではアドヴェントの詩が唱えられ、歌を歌い、そして毎週先生からの語りのお話を聞きます。最初の週は鉱物の話を、2週目は植物の話を、3週目は動物の話を、そして最終週は人間の話が取り上げられます。こうして子どもたちは一週間ごとに次の世界へと進んでいきます。

●セント・ニコラウス・デイ、サンタルチア

 サンタルチア(聖ルチア祭)12月13日に祝うお祭りですが、何故か日本ではやっていないのでここではスルーしますが、セント・ルチアは女性の聖人で、白いドレスに赤い腰帯、頭にロウソクを着けて子どもたちにパンやクッキーを配ります。
 12月6日はセント・ニコラウスの日です。ニコラウスは1年中子どもたちがした良いことと悪いことをこっそり見ている聖人です。シューレ時代はニコラウスが1年教室を訪れたものですが、学園が藤野に移ってからはまだ姿を現していません。残念ですが、彼も世界中を回らねばならないのできっと忙しいのでしょう。

 その代わり、低学年の子どもには、1年間の頑張った褒め言葉ともう少し頑張るような励ましの言葉が書かれた手紙が届くのです。でも贈り物のみかんとくるみが入ったプレゼントの袋は、今も全学年に届きます。エポック授業が終わると教室の戸の前にいつの間にか置かれているのです。ですからこの日は子どもたちはそわそわ落ち着きません。教室前を通る人影でもあろうものなら授業中にもかかわらず、皆立ち上がって「ニコラウスだ!」と。そして、教室前に贈り物がもう届いたかどうかを確認したくて、やたらトイレに行きたがるのです。保護者の皆さん、この日ばかりはしっかり自宅で用を済ませてから子どもを登校させてくださいね。

●クリスマス

 イエス・キリストが誕生した日です。学者たちの研究ではキリストの実際の誕生は春とされていますが、冬至が「闇から光へ」と増していく転換日であるように、人類に救いの光をもたらした象徴キリストの誕生日として今では世界中に普及しました。
 子どもにプレゼントをするばかりがクリスマスではありません。神様が独り子イエスを地上に贈り物として捧げたのは人間を愛するが故です。私たちもいただいた喜びを感謝の気持と共に他の人に巡らしていきます。それがクリスマス時期のカードであり、プレゼントの意味です。

 子どもたちはもらうばかりではなく、「感謝の習慣」と「自らがほかの人や社会に何かを捧げる習慣」を季節の祝祭を通して身につけることが大切です。こうして私たちの周りで「愛と感謝」が互いに贈られ合い、「愛の光」が温めてくれるのです。

●クリスマス劇

 世界中のヴァルドルフ・スクールではこの時期、先生たちが毎年、児童・生徒への贈り物として生誕劇を演じます。子どもたちにはマンネリ感を感じさせつつも、すっかり定着したのではないでしょうか?
 しかし、本来クリスマス時期の劇としては、この「生誕劇」の他に、「パラダイス劇」と「東方の三博士(3人の賢者)」もあります。学園でも3年前から念願の「パラダイス劇」を中学・高校生向けに始めました。残るは最後の「東方の三博士」ですが、教師の数、スケジュール等のいくつかの問題があり、まだ実現してはいません。

 けれども、ほかの国々ではこれらの劇を演じているのは必ずしも教師ばかりではありません。保護者の皆さんが教師と一緒になり、または自分たちだけで劇(学校のクリスマス劇ではなく)を企画し、演じているケースも少なくないのです。私は、これらの劇を親御さんたちが義務ではなく、自分たちの楽しみ、コミュニティーへのプレゼントとして実施できるようになった時こそ、この学校の共同体が真の意味で一歩前進できた時かな?  と感じています。


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