8年劇「夏の夜の夢」について(2016/2/19〜21)

2015年度 8年担任・加藤優子

8年劇についての原稿を依頼されて、書いているのが本日2月13日、本番は来週の19日からの3日間ですので、本番を待たずの原稿となります。よって8年生との劇へのこれまでの取り組みについてまとめたいと思います。

さて、子どもたちも8年生という時を迎え、担任との8年間も終わりに近づいてきています。8年劇は8年間の集大成ともいわれる最後の大きな芸術体験となります。

では実際にどのような作品が8年劇にふさわしいのでしょう。よく言われるのが悲劇ではなく、喜劇、明るい未来があるもの、理想への欲求が満たされるもの、ということです。今まで学園で行われてきた八年劇を思い返してみると、どの劇もそのクラスにぴったりと合っていて、必要なものであったと感じています。子どもたちの顔を思い浮かべながら、私のクラスにふさわしい劇とはなんだろう?と考える日々が続いていました。7年生の3学期ぐらいになると、子どもたちからも、この劇がしたい、ミュージカルがやりたいなど要望が寄せられることが頻繁になり、そのたびに子どもから出された劇をひそかに研究していました。そして、最終的には、その作品の世界の美しさと、登場人物にクラスの子どもたちがパズルのように当てはまっていったこと、子どもたちの個性が表現できる作品だと感じたことで、シェイクスピア作「夏の夜の夢」としました。実はこの作品、私が8年劇の題材を探し始めたころ、一番初めにこれがいい、と思った作品なのです。一方で、男女の恋愛が中心になっていることから、子どもたちが受け入れづらいのではないかと迷っていましたが、この劇を彼らはすることができる!という何か直感のようなものが働き、決断することができました。

そして8年生の4月始業日、この題名を告げたときの彼らの表情は、こちらが思っていたよりもはるかに期待に満ちており、シェイクスピアという難しい劇への挑戦であることが、やる気のある彼らの心をさらにやる気にさせ、「夏の夜の夢」という題名の美しさに多くの子が惹きつけられているようでした。

その後、福田恆存訳「夏の夜の夢」を全員で読むことを始めました。「夏の夜の夢」は大きく3つの世界に分かれています。職人、貴族、そして妖精界です。この3つの世界の人物たちが森のなかで出会い、森から出て行く時にはそれぞれが少しずつ成長をして、幸せになって終わるという物語です。職人たちはユーモラスで、文句なく子どもたちに受け入れられてゆきました。恋愛を繰り広げる貴族たちは、こちらの不安をよそに意外にも抵抗なく、「やってもいい役にあげられるようになりました。妖精界の女王と王様も、美しく不思議な存在として印象づけられたようでした。ただ、妖精のあまりセリフのない役は人気がなく、とにかくセリフが多くて出番の多い役がやりたい、という声が多くありました。

2学期に入り、待ちに待った台本が渡されて数日後、いよいよ役発表。おおむね自分の役に満足し、セリフを練習するべく気合が入っていきました。それと同時に係を決めて、衣装、大道具、小道具、広報、音楽と各係でリーダーを中心にどのような仕事をこれからするのか話し合いを始め、8年劇上演という一つの大きな目標に向かって、クラスとして本格的に仕事が始まりました。その後、パラグライダー合宿や文化祭という大きな行事のために中断することもありましたが、この2つの行事もクラスという共同体の結びつきを強め、8年劇へ向かう基盤となったように思えます。

各係の仕事は、専科の先生に助言をもらいながらも、基本的には自分たちで進めていきます。時には、メンバーの中で意見が違ってなかなかまとまらず、仕事が進まないことに苛立つ様子が見られることもありました。一方で、自分の意見を言うだけでなく、他人の意見も受け入れながら、時間をかけてまとめてゆく様子も見られました。そしてどのように仕事を配分すればよいか、誰に何を頼めばより良いものができるか、自分には何ができるのか、など大人の社会でも大切とされる基本的なあり方が、そこで育まれていった時間でした。そして出来上がった作品は、切り絵を用いたちらし、宮殿を影まで表現した背景画、剣や花冠、どれも彼らの芸術性が表れた優れたものでした。衣装係は男子ばかりのメンバーで、初めは指示がないと動けないところも多々ありましたが、次第に自覚と責任が生まれ、妖精の服を手縫いで丁寧に仕上げたり、足踏みミシンで多くの衣装を縫製していきました。音楽はメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の曲を参考にして自分たちで作曲を試み、この劇にふさわしい曲を作り上げました。その演奏も指揮も、彼らが担います。「美しく幻想的な世界」。私が何度も口にしたこのイメージを、子どもたちは一つ一つ作り上げていきました。

演技の方は、アメリカやアジア各国のシュタイナー学校で演劇の指導をされている俳優のデイヴィッド・アンダーソン氏から、演劇をする上での呼吸を含めた相手とのやりとりの仕方や、職人、貴族、妖精たちの動きの違いなど「夏の夜の夢を演じる上で基本となることを教えていただき、子どもたちも大変楽しんで学んでいました。実際、私と子どもたちだけで演技をつけることが始まってからも参考にし、あとは、みなで意見を出し合ったり、自分で演技を考えたり、演技指導経験のある他の教員とともに練習に励んできました。演技をすること自体が好きな子どもが多く、練習そのものが楽しいひと時であったと思います。その一方で、自分の役の演技に悩んでいる子どももおり、どのように自信を持たせて舞台に上がらせるか、私も頭を悩ませているところです。

これまでの約1年間、本当にそれぞれが持てる力を発揮してきたと思います。係の仕事も演技も、とにかくやる気のある彼らに囲まれて、とても幸せな時間でした。これまでのすべての過程に感謝したいと思います。

そして、子どもたちが思い切り元気に本番で演技をし、観客とともに「夏の夜の夢の世界を十分に味わえることを願っています。

<シュタイナー学園通信 No.34より>


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