カリキュラムと組織の成長段階から 子どもの健康を考える

カリキュラムを知る:小学校1年生から高校3年生(12年生)までの成長を見渡しておく

 子どもの発達のことを知らずに、子育てをしていくのはとても難しいことです。子どもたちはその成長の過程で、さまざまな出来事を引き起こします。親はその中で苦労することも多くありますし、不安に苛まれることもあります。近年、社会構造の変化によって子育ての時に、祖父や祖母などの上の世代が近くにいるということが少なくなってきました。祖父・祖母世代が、子育ての時の精神的な支えとなるのは、子育てをしたときの体験が見通せるためです。そのアドヴァイスや家事などの熟練した手助けが、子育て世代を大きく支えてくれます。シュタイナー学園を選んでくださる家庭は、学園の地理的条件から引っ越しをしてくる家庭が多いため、上の世代の手助けを受けにくいという構造があり、近年はその難しさがさまざまな形で現れだしています。

保護者と共に子育て・教育のパートナーとなるためには、この分野についても様々な工夫が必要です。シュタイナー教育では、まだ活用されてはいないが、それがしやすい環境が眠っているのではないかということが分かってきました。今回はその中から二つ、発展途上のものをご紹介したいと思います。

カリキュラム説明会

 シュタイナー教育の理念が具体化されたものが、カリキュラムです。その中身を深く知ることが「子どもの発達」を知ることと直結しています。クラスの会(学期に2〜3回開かれる保護者会)では、担任やその他の教員から、その学年の子どもの発達、それに合わせた学習内容について語られます。しかし1〜12年までのカリキュラムについて包括的に保護者が触れる機会は非常に少ないのが現状です。教師が保護者といっしょになり、カリキュラムについて取り組む会を定期的に開いていくことを教師たちは決意しました。子どもの発達についての「見通し」を持つことで、子どもたちの成長を「余裕」を持って「客観的」に見ていきたいと考えています。

 教員が中心となって幼児から高等部までの教育、15年分をダイジェストで発表する機会を作りました。今後は、保護者の方々と共同して、さまざまなカリキュラム体験ができるようにしたいと考えています。シュタイナー教育のカリキュラムが持つ内容の在り方を参考にし、家庭・家族の体験がより豊かになることがあれば、それは学園にとってとても幸せなことです。シュタイナー学園が社会に貢献できることの中で最も大切にしていきたい一分野でもあります。

大人のカリキュラム

 学園ではそれぞれのクラスで、年齢に応じた様々な課題や出来事が生じています。例えば、子どもの自我の芽生えが見られる9〜10歳のころに、子どもたちは不安定な状態になり、孤独を感じ周囲に冷たく接する態度が見られたり、クラスではいじめが起こったりということが起きます。私たちはこの状態のことを「9歳の危機」と呼んでいます。

 初期の学園の記録には、その「9歳の危機」に右往左往する大人の姿が残されています。教員も保護者もその対応に四苦八苦し、学園の存亡が危ぶまれるところまでの状態になっていたようです。その様子を当時の保護者や教員たちは「余裕がなかった」、「頭で考えすぎた」とふり返っています。今は「9歳の危機」でクラスが大変になりすぎ、学園の存亡が危ぶまれるということにまで進むことはありません。「9歳の危機」は当たり前のこととして捉えられているからです。クラスによっては、保護者が自分たちの9歳のころを振り返り、それを冊子にしてまとめたりもしており、楽しみながらこの危機を乗り越えていく土壌ができています。子育てや子どもの発達についての「見通し」が学園に蓄積されている証しです。

 保護者や教員が、子どもの学年によってどんな困難に出会うのか、そして大人の中でどんな協力体制が作られればその危機を乗り越えていけるのか、その「見通し」をまとめようと動き始めています。低学年のクラスの保護者が、卒業間近の12年保護者をクラスの会に呼びその話を聞いたり、相談したりするという試みが始まったところです。祖父・祖母世代が身近にいない家庭が、学園の中の関わりの中で子育てがしやすくなる環境が私たちに作れるかどうか、学園の保護者も教員も今、問われているのではないかと思います。ここでの実践例が、現代の社会に大きな影響を与えることも将来は起こるかもしれません。

学園の成長段階を知ることで子どもの健康をとらえる

シュタイナー教育では、子どもがどのように成長していくかを1年おきに丁寧に観察し、それに合わせて綿密にカリキュラムを組んでいます。教員は子どもや人間への観点をはっきりと持っていて、子どもの成長の段階で何が起こっても、焦らず客観的に子ども成長を見守るよう努めます。今回、学園の成長段階を100年のスパンで考え、今自分たちの共同体がどのような成長段階にいるかを客観的にみることを試みました。そして図式化してみました。この図は、共同体の状態を冷静に見たり、今の自分たちに必要なものが何なのかを判断したり、今後の課題を考えたりするための大きな指標となることが分かりました。(図)逆にこれがないと不必要な決断がなされてしまい、健康的な決定がなされにくいのだということもはっきりしてきました。

(図)シュタイナー学校の成長の諸段階 –シュタイナー学校の100年間—
参考文献:「Vision in Action: Working with Soul & Spirit in Small Organizations」(Christopher Schaefer , Tÿno Voors,1996, Lindisfarne Books)

教員 小柳平太 


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