学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.11.23

保護者

わたしの手、あなたの手 ~保護者の手しごと~

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.145 2022.11.23

私がシュタイナー教育と出会って良かったと思うことのひとつは、手仕事の豊かさを感じることができたことです。編み棒もミシンもほとんど触ったことがなかった私は、6年前長女のシュタイナー幼稚園入園をきっかけに羊毛や毛糸やシルクに触れ、自然素材の温かみ、そして身の回りのものを自分で作ることができるという喜びを感じるようになりました。

不恰好ながらも初めてかぎ針編みで幼稚園用のルームシューズを完成させた時の感動は、まるで新しい世界が開けたような感覚でした。そしてこの学園に長女が入学した後は、先輩保護者の方々の美しい手仕事品に魅せられ、有志による活動グループ「手しごとWERK(ヴェルク)」に参加しています。

WERKは、子どもの学用品を保護者が製作するのをサポートしたり、先生からの依頼を受けて授業で使用する教具を製作したりしています。また保護者向けにワークショップを開催したり、学園内外へ作品を販売したりもしています。

中でもまもなくやってくるクリスマスアドヴェントの時期は、WERKが最も心を込めて大切にしている時期です。11月頃からアドヴェントのしつらえに使うマリアとヨゼフ、動物の羊毛人形を作るワークショップを行い、クリスマスマーケットを開いて手仕事品を販売します。

クリスマスにまつわる作品の中でも、オリジナルのアドヴェントカレンダーは特に心を込めた作品です。アドヴェントカレンダーといえば紙をめくるものやお菓子が入っているものが多いと思いますが、WERKのものはふわふわの羊毛の中に1日ひとつの小さな「おくりもの」が入っています。羊毛は虹色に染め、おくりものは一つひとつ手作りしています。

第1アドヴェントから順に、鉱物、植物、動物、人間界になぞらえたおくりものが入っていますが、色や素材など細部にいたるまで何度も話し合いを重ねてこだわりをもって作り込んでいます。メンバーは実に1年をかけて20数日分のおくりものを作り上げ、最後に羊毛でひとつずつ包み、金のリボンをかけ、さらに虹色の羊毛にそっとはさみこみます。

このアドヴェントカレンダー、毎日異なるおくりものが出てくるという楽しみはもちろんあるのですが、それを包んでいる羊毛のふわふわ感や、おくりものの鉱石のゴツゴツ感、銅板の硬さや冷たさ、あみぐるみの柔らかさ、紙や糸の質感などを、直接手で触れて感じる「体験」をすることそのものを楽しんでほしいという思いがあります。この体験まるごとが、WERKからの贈り物とも言えるかもしれません。この体験をした子どもたちが(もちろん大人の方も!)、アドヴェントの時期を心静かに豊かに過ごすことができ、その方の大切な思い出のひとつになってくれるといいなと思います。

そして実はWERKの製作メンバーにとっても、作品を完成させる喜びはもちろんのこと、集まってあれこれ相談しながら手を動かす過程そのものがとても豊かな時間になっています。何でも機械で素早く大量に作れる時代だからこそ、一つひとつ丁寧に手を動かしてものを作ることの大切さや心地良さを感じることは、日々の生活を満ち足りたものにしてくれる…。WERKの活動によってそんなことを感じてくれる人が増えたらいいなと思っています。

*アドヴェントについては過去の記事もご覧ください。
https://www.steiner.ed.jp/?s=%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88

ライター/保護者 上田奈々