学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.03.30

教育

音楽療法の実践~アントロポゾフィー音楽療法(後編)~

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.129 2022.3.30

「アントロポゾフィー音楽療法」の後編では、学園や保育園との関わりや大人へのサポートの実際についてお伝えします。対象者の年齢が幅広いのも音楽療法の特徴のひとつです。

前編はこちら
 
1.個人音楽療法
アントロポゾフィー認定医でもある校医から紹介されたお子さんに対して、学外の自由診療のクリニック内の療法室にて行っています。その子らしさが学校生活や学びにおいてより発揮できるために、状況に応じて、保護者や担任の先生、校医、看護師、他の療法士と力を合わせながら関わっています。以下は校医と保護者の声です。
 
「音楽療法は、いわゆる病名がつく病気に対して処方する以外にも、音楽の力が健康に働きかけるのではないか、本来その子が持っている良さがより発揮できるのではないか、と感じる時にもお勧めすることがあります。
音を介して人と出会い、人との対話を深めたり、音に静かに耳を傾けることで内的な静けさがより保てるようになります。集中が苦手な子の助けにもなります。緊張気味の心と身体に対して深い呼吸ができるようになり、体が緩み、結果として顔つきや行動が大きく変化することもあります。音楽療法は、音との関わりなので主に魂レベルでの働きかけですが、このように肉体にまで大きく作用することもある力強い療法なのです(校医より)」
「意識が外へ広がりすぎる子どもが、響きに耳を傾けながら自分に向かってまとまっていくような時間を毎回持てたのは、音楽療法ならではの経験だったと思います (保護者より) 」
「我が子の療法を通じて、音はすべての人に平等に作用するのだと感じました。音自体が持つ何かが、確実に生命や心、魂に響く様子を何度も体験させてもらいました。ひとりぼっちじゃない感覚、音と共に存在している感覚。子どもだけでなく、わたし自身も本当はどうしたいのか? そんなことを聴こうとする力も、音からもらったような気がします(保護者より)」
 
2.保育園での音楽体験
週1回の「ひびきの時(音楽の時間)」や「季節の祝祭での音楽」を担当しています。キンダーハープの響きに耳を傾けたり、季節の歌に合わせて動いたり、メルヒェンクーゲル(澄んだ響きの小さなボール状の楽器)の音でひとりずつご挨拶したり・・・・。異年齢の子ども集団の成長のサポートとして、呼吸を調えることや聴く力を育むことを大切に行っています。保育士の方々の声を紹介します。
 
「現代は聞こうと思わずともあらゆる音が飛び込んで突き抜けていきます。聞かされることに慣れた後は、本当に必要なことを聴く事を身につけるのは大変でしょう。『ひびきの時』では、静けさの覆いのなかで、その子自らが耳を澄ませ聴くことが出来る尊い時です」
「鼻詰まりのある子どもたちの呼吸が変わってきたような実感があり、音の力や普段浅くなってしまっている呼吸を意識する大切さを感じています」
 
3.大人向け音楽的セルフケア講座
これは「コロナ禍での大人の不安や緊張を少しでも緩められないでしょうか?」というリクエストから始まりました。不安というのは音楽療法でよく挙がるテーマのひとつです。
そこで保育士や保護者を対象に、お家でひとりでもできる音楽的ケアを紹介する機会を持ちました。「縮こまった体と心が広がった感じ」「家でもできる内容で続けてみたい」「また受けたい」といった感想をいただきました。

 
シュタイナーは「どんな人でも自我は病むことはない」と言いました。ここでいう自我とは「わたし」という内なる存在ともいえるでしょう。これからも音楽を通して、一人ひとりが持つ「わたし」という内なる響きに耳を傾け、支え合っていきたいです。

ライター/アントロポゾフィー音楽療法士 勝田恭子