学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2020.05.27

教育

休校中の取り組み

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.81  2020.05.27

新型コロナウィルス感染防止のため、シュタイナー学園では3月から休校になりました。12年生(高校3年生)の卒業式を1週間後に控えた2月のおわり、いつもは全校で行う終業式を初中等部と高等部に分かれて行いました。

休校を決めてからも12年生の卒業行事をどうするか、何度も話し合いがもたれました。2月29日の卒業オイリュトミー公演は、初中等部や外部のお客様は急きょお断りし、高等部中心の観覧となりましたが、例年に比べ観客が少ない中でも、もてる力を精一杯出して頑張る12年生の姿は美しく、心を打つものがありました。

卒業式は毎年、全校生徒と保護者が集い、全員で長いアーチを作って盛大に送り出すのが恒例ですが、今年は高等部生とその保護者を中心に行いました。「卒業式が中止になる学校もある中、自分たちは幸せだ」と前向きに受け止める姿に、彼らの12年間の成長を見た気がしました。アーチは作れませんでしたが、教員の創意工夫で賑やかに送り出すことができました。彼らがいつかこのときを振り返り「あのとき大変だったね」と笑って話せる日が来ることを祈るばかりです。

4月になっても開校の目途が立たず長い春休みが続く中、子どもたちも学校に行くのを待ちわびていました。とくに幼稚園・保育園を卒業し小学生になった1年生は学びの準備が必要です。そこで1年生だけ特別に、一人ずつ時間をずらして登校し、校庭で担任の先生と「はじめまして」のごあいさつをし、新しい教室をちょっとだけ覗いて安心して帰っていきました。子どもたちの手には、入学式で12年生が1年生に渡すために育てたチューリップのおみやげがありました。

その他の学年はクラスごとに家庭学習の課題を作成して届けています。シュタイナー学園ではクラス替えがないので、担任はクラスの子どもたちのことを熟知しています。学校にいるときと同じように「朝の詩」を唱えることから始まり、リズム遊びで体を動かしたり、笛を吹いたり、歌を歌ったり、先生が作ったお話を読んだり、エポックノートを描いたり、日記をつけたり……課題の内容はクラスによって様々です。低学年は保護者と一緒にやる課題が多いですが、高学年は漢字プリントや計算プリント、歴史のまとめなど、一人でできる課題が中心です。まだ文字を習っていない1年生は、家でできるお手伝いや体を動かす活動などの課題が出されます。担任は各家庭に電話をし、近況を聞いたり質問に答えるなど、学習面や精神面でのフォローをしています。

高等部では早い段階からオンライン授業の可能性を検討していました。高等部の学びは多岐にわたるため、知的好奇心旺盛な彼らの学びをこれ以上止めるのは良くないとの判断からでした。シュタイナー学園では様々なメディアの影響から子どもたちを守るため、低学年のころからメディアの利用については細心の注意を払っています。子どもたちがパソコンやスマートフォンなどのデジタルメディアに触れることができるのは、9年生(中学3年生)のPC概論の授業を経てから。コンピューターの仕組みをきちんと理解した上で、節度を持って使えるようになるためです。それでも校内や通学路でのスマートフォンの使用は禁止されています。

そのような背景がある中、いきなりオンライン授業を行うことには抵抗もありましたが、夜更かしで生活リズムが乱れている生徒や、外に出られず孤立感を抱いている生徒にとって、毎朝決まった時間にオンライン上でクラスメートと会うことは、さまざまなマイナス要素を差し引いてもプラスであると考えました。予定した新学期から1週間遅れで10~12年生(高校1~3年生)が、HRと2つの教科を午前中2時間のオンライン授業で学び始めました。現在では9年生もコンピューターの導入と並行しつつ、オンライン授業を始めています。

オンライン授業には良い点も悪い点もあります。思春期の生徒たちが「繋がり」を感じることができる大切な時間となる一方、長時間にわたり集中して画面を見ることは通常の授業以上に疲れを感じます。通常のエポック授業は100分ですが、オンラインでは40分程度が限度のようです。いつも通りの授業はできない中、何を大切にし、何を伝えたいのか、教員も選択を迫られています。

緊急事態宣言解除を受け、ようやく明るい兆しが見えてきました。毎週、学校再開の時期や分散登校の方法、学びの進め方などについて話し合いを重ねています。子どもたちのいのちと安全を守りつつ、絆を絶やさず健やかな学びを続けるための最善策を日々模索しています。一刻も早い終息を願いつつ、今私たちにできることを頑張りたいと思っています。

ライター/教員 白田拓子