学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2017.09.04

保護者

3人の子供の親として、真剣に教育について考えました

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.9  2017.09.04

私には3人の子どもがいますが、長男が小学校入学のタイミングで真剣に教育について考えました。なぜ真剣に考えたかというと、子どもが巣立つ未来の社会に不安があるからです。

自分と同じような教育を受けさせても、子どもが巣立つ未来においては、ますます通用しなくなってしまうのではないか、という懸念が大きな動機です。

超高齢化・超少子化の人口構成の中で、就労世代の負担は今の二倍以上に増加し、かたやグローバル経済の成長は限界をむかえ、1%の人間が世界中の富を独占するまでに至った超格差社会に拍車がかかっていることでしょう。

経済成長率だけをとっても「失われた」何十年が年々延長しているという労働環境の中、さらに人工知能が人類を超えて爆発的に社会進出するシンギュラリティが人間の働き方を一変させる時代が訪れます。

これまでの産業構造におけるどんな優良企業も想定外の事態に直面する可能性があることを日々目の当たりにしている世代が、「一流大学・一流企業・年功序列・終身雇用・幸せは老後で」という神話には人生を預けないことでしょう。

未だかつてない不透明な未来へ旅立つ子どもに、従来型の人生モデルと就労スキルを推奨するのは気が進まなかったのです。

当学園には毎月色んな方が見学にいらっしゃいますが、先日ある大学教授が「学生の考える力が年々失われている」ということを危惧されていました。

スマホ世代になり、わからないことがあれば瞬時に指先で回答を得てきた「学び」は、答えのない問いに途方に暮れるといいます。「考え方の答えを教えてください」と求められるようです。

未来をどんなに正確に予測したところで、その社会が求めるスキルを提供しようとしても、それもまたさらなる社会の変化の中では役に立たなくなってしまうかもしれません。

回答を追い続ける競争原理の働き方や、社会が求めるものに合わせるライフスタイルはもう古いのかもしれません。子どもに対して、たとえ従来までの人生設計に代わるモデルを示してあげられなくとも、未来を楽しく生きるためのパスポートの種類は何となくわかります。そこで自らの意志と感情と知性に基づいて未来を切り拓く力を培ってほしいと願いました。

どんな社会になっても、どんな経済状況になっても、どんなに価値観の転換があろうとも、その都度、自分の力でたくましく生きていける大人になってほしいと。変容を厭わず活力に変えて幸福に生きていく人間とはどんな姿だろうと想像した時、それはきっと意志と感情と知性がバランスよく調和して竹のようにしなやかな強さに結実している人ではないかと思い浮かべました。

その上で、世界を祝福する畏敬の気持ち、他人の物差しではなく自らのまなざしで他者の尊厳を守る優しさ、信頼からのコミュニケーションで自分らしさを全うする姿勢、学ぶ喜び生きる喜び…そんなものがあるといいなと願いました。でもそれらは本来人間が自然と獲得するような事柄なのかもしれません。子どもがその人らしく育つ力を邪魔しない環境と、経済社会に求められる人材を育成するのではなく人間とは何かに基づいた教育哲学さえあれば、幸せな大人になるのではないでしょうか。

最初はみんな素敵な子どもなのですから。

川本潤(広報室)