学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2020.09.30

教育

世界とつながるシュタイナー学園の交換留学

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.90  2020.09.30

 高校生で留学、という経験はどのような意味があるのでしょうか。高校生になった生徒は、以前よりも主体的に学ぶことが求められ、また彼ら自身も、より主体的に学びたいと思うようになっています。そんな彼らにとって交換留学という体験は、世界に自ら飛び出し、学ぶことができる大きな機会です。

現在、世界には1000校以上のシュタイナー学校があります。それらの学校が互いに同じような交換留学制度で繋がっていて、チャンスがあればそのうちの1校で学ぶことができます。

シュタイナー学園では、交換留学の相手が見つかれば、3カ月を上限にどの国にでも留学することができ、毎年何人もの生徒が世界中のシュタイナー学校に留学しています。クラスから同時期に留学する人数の制限や、課題未提出によって留学が認められないこともありますが、言語の得手不得手に関係なく、英語圏のアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、そしてドイツ、フランス、ハンガリー、ブラジル、韓国など非英語圏にも留学し、言語の習得だけではなく、自国との文化の違いや人間としての共通点など、様々な重要な気づきを経験して帰ってきます。

一人ひとりの留学体験は、ポジティブなものばかりではありません。フランスで言語の壁は身振り手振りでなんとか乗り越えたけれど、食習慣の違いから便秘や頭痛に悩んだり、ブラジルで社会問題と隣り合わせに暮らし、それらを真剣に議論する同い年の高校生に感化されたり、わかるだろうと思っていた英語の発音がなかなか聞き取れずに悔しい思いをしたり、自分の意見を持つということがどういうことかを体験しカルチャーショックを受けたり、時に痛みを伴った学びもあります。

一方で、外国人で、いわばよそ者である自分に対し、優しく受け入れてくれるクラスメイトやホストファミリー、音楽やスポーツなど身につけた趣味を通して、言葉を超えて友情を育めることに感動し、自信をつける生徒も多くいます。

そうして帰国した生徒は、これまでとは違う視点で海外の問題やニュースについて考えるようになります。滞在先国での良い習慣を日本に伝えたいという思いや、日本の良さに改めて気づいた、また行きたい、という話を聞くと、日本の外に出て、客観的に日本を見つめる機会を持てる留学は、言語習得以上の大きな意味があると感じます。

また留学生がクラスに入って一緒に学ぶことは、その生徒を通して、その人の国や文化、歴史等を学ぶ貴重な経験になります。ニュージーランドからの留学生が教えてくれた先住民族の踊り「ハカ」をクラスの男子全員で踊ったこと、韓国人の留学生が慰安婦問題について話してくれて日韓問題を考えたこと、ドイツ人留学生が教えてくれた社交ダンスなどは、学園にとっても忘れられない思い出になりました。

保護者にとっても初めて我が子を海外へ送り出すことになる交換留学ですが、不安は少ないようです。一つには、相手校は言語は異なっても同じシュタイナー学校で、サポートしてくれる教員にも一人ひとりの個に寄り添う姿勢があります。滞在させていただく家庭もシュタイナー教育を選ばれている家庭です。そして概ね同じ期間をそれぞれ滞在するため、留学の費用は交通費と小遣い以外はほとんどかかりません。(アメリカ、オーストラリアはビザ申請の費用が別途必要、その他は観光ビザで入国するため不要。)

今年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、残念ながら交換留学を中止せざるを得ませんでした。コロナ渦が落ち着き、留学制度を再開できることを切に願っています。

ライター/教員 廣田聖子