学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.05.25

保護者

転入家庭の一年

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.133 2022.5.25

藤野で暮らし始めて1年がたちました。
 
神奈川県秦野市に住んでいた我が家。藤野とは丹沢山地を挟んで約1時間半の距離です。諸々の事情で、まだ藤野と秦野を行ったり来たりして暮らしています。予想外に長く行ったり来たり生活をしているなど、暮らし始めて1年がたっても思うようにならないところもまだまだあります。でも、子どもたちの中では確実に「ぼくの学校、わたしの学校」として位置付き、不安だらけだった1年前の4月とは違う新年度のスタートをきりました。
 
家族にとって初の引っ越し。この1年、私は生活環境の変化に対応しきれず「甘かったなー」と何度後悔したことか!
 
そもそも、仕事上の興味や子育てからの興味により私が「シュタイナー教育ってすごい。ここに私が知りたいって思っていた本物があるかも」と出会い直したのが4年ほど前。息子の中学進学のタイミングでの転機になりましたが、私の思いで息子の選択を引っ張ってないか。我が子たちがここでの学び方を良いと感じていくかどうか。気になりながら、夫や息子の「やってみようよ」という言葉、娘の「ママが選んだ学校なら…」という渋々ながらもの同意を経て、家族は動きだしました。
 
いろいろ、いろいろ、良いところや不安なところを考え、話し合いましたが、結局、「それでも『いいね』って思っちゃったんだよね」ってことだったと思います。
 
新しい学校での生活が始まるまで、渋々だった当時小4の娘は、始業式後しばらくして、「ママ、この学校、気に入った」と話しました。夏休み頃には、「ここの学校の勉強だとよくわかるの。国語はね…、算数はね…。前の学校では聞いていたけどわかってなかったんだなってことがわかったよ」と話していて、実感のともなった精一杯の言語化に助けられる思いがしました。
 
当時中1の息子は、小学校から中学校へのギャップに加えて、生活環境の変化、学校の校風の違い、学び方の違いなどなど、気持ちの整理に時間がかかっていました。しかし、授業・校外学習・行事、友だちや先生、大人たちとの関わりの時間を通して、少しずつ彼自身の実感をもって新しい学校と地域を感じていき、彼なりの考えを持つようになりました。
 
平日は仕事のため家族と離れて秦野での暮らしを続けている夫は、変わっていく子どもたちの様子や藤野の話に応じきれなくて、家族内で温度差がでてきた時期もありました。夫自身も藤野の人たちと関わる時間を持ち、週末に家族で一緒にすごす時間を重ねるうちに新しいバランスができつつあります。
 
安定した暮らし、安定した仕事を選んできた私にとって、まさかまさかの選択。想定外の人生の転機でした。藤野で出会った人たちが私の不安を聞いて、「これからが楽しみだね」と声をかけてくれました。そうとばかりは思うことができなかった1年目だったけれど、まだ確かではないけれど、想定外の未来につながっている予感はでてきました。
 
一つひとつ学びを越えるたびにここを居場所として確かなものにしていく我が子たちの姿。それを近くで見続けられた幸せ。その確かな足場をもとに、2年目を歩み始めています。
 
ライター/保護者 須山祥子