学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2025.10.01

教育

12年間を通して発展するシュタイナー学園の自然科学

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.219 2025.10.1

吉野の桜
高等部のある吉野校舎の校庭の真ん中には、樹齢100~130年(文献調査による)の大きな桜の木が立っています。吉野校舎は、学園が越してくる前は小学校として使われていました。もう何人の生徒たちを迎え、そして送り出したことでしょう。高等部の広報委員会が発行している小冊子「よしのざくら」も、この桜の木から名前をとりました。
 
数年前、吉野校舎のシンボルとなっているこの桜の木は、「なぜ、木の幹がボコボコしているのか?」という生物を選択した11年生たちの素朴な疑問から調査が始まりました。桜の木の表皮や、そこについている苔、虫、土を調査していくと、いつも行きあたる虫がいました。
 
それは、コスカシバというハチに似た透明な翅を持つ蛾で、桜、桃、梅などの樹木に寄生します。また樹液を調べてみると、透明なものと茶色いものがあり、その茶色い樹液は、コスカシバの幼虫の糞が混ざることで茶色くなっていることもわかりました。このことから、桜の表皮がボコボコするのは、桜の木の成長によるのではなく、昆虫が寄生することによるものだということがわかりました。
 
桜は、弱酸性の土を好みますが、校庭の土は固まるように数パーセントのコンクリートが混ぜられているためアルカリ性です。しかし、なぜか桜のまわりの土だけが弱酸性となっていました。これにもコスカシバが関係しており、桜が虫を呼んでいるのかもしれないという仮説も生まれました。

 

シュタイナー学園の自然科学
高等部における理科教育は、1年生から8年生までの様々な学びを基盤としています。中等部では、動物、植物、人間を通して世界を観察し、かつ具体的な体験を通して学んでいます。高等部の物理、化学、生物、地学では、現象の独立した概念的探究に重点が置かれています。
 
例えば低学年では、火、空気、土、水の要素は、米づくり、紙すき、林業実習、家づくり、校庭での遊びや観察を通して体験します。その後、中学年では様々なものを燃やしてみる燃焼実験や、石灰を焼いて生石灰ができ、生石灰に水を加えると発熱するなどの実験を行い、現象を探究していきます。高学年では、自然科学の法則や様々な実験のアプローチ、そして社会的影響の発見に重点が置かれています。
 
6年生の最初の物理の授業と7年生の最初の化学の授業では、抽象的な思考ではなく、鋭い知覚と洞察力を養うことに重点が置かれます。物事のつながりを発見することが重要です。化学元素について議論する前に、物質の形と状態を理解し、徐々にこれらの状態に本質的に類似する元素、すなわち水、酸素、窒素、炭素について学びます。
 
6年生で学んだ比較と図解によるアプローチは、7年生で新たな方向に進みます。力学を例に挙げると、その単純な法則は、体育館で滑車を用いて生徒や教師の身体を小さな力で持ち上げるなどの実験によって、てこの原理へと発展していきます。
 
9年生では電話や蒸気機関といった多くの技術装置について詳細な説明が行われますが、10年生になって初めて、定量的な側面を強調した体系的なアプローチが確立されます。身近な現象を認知的に考察し、これまで観察から導かれてきた概念を再定義します。11年生では、より新しい電気技術(ラジオ、X線、原子力発電、放射能)を学習した後、光と色彩の理論でこれまでの学びが完結します。


ライター/教員 大嶋まり