学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2025.10.15

教育

動物学のカリキュラムについて

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.220 2025.10.15

4、5年生のカリキュラムに「動物学」があります。子どもたちは、9才をこえた頃から自分たちの周りに少しずつ目を向けるようになり、興味も外へと広がっていきます。そして、4年生から自然科学的な学びが始まります。
 
子どもたちが4年生のとき、わたしが「今日から人間と動物のエポックです。初めに人間のことを学んでいきましょう」と言うと、「人間?」「人間だって」「自分たちのことだよね」と不思議そうにした子どもたちの表情を思い出します。丸い頭と広いおでこ、あごは少しとがっている。子どもたちは、自分や友達の頭や顔を触りながら、目や耳、鼻や口の形や働きを出し合います。
 
そして、それらは内側から外に開かれていることを話します。背中は平らでおなかがへこんでいて、両手で大きな丸い物を抱えているかのような胴体(以下「体」)を、実演しながら何とかイメージしてもらいました。「体の中には、いろいろな物があって」と話し始めると、心臓や肺や腸などの言葉を得意気に話す子もいました。空気を吸ったりはいたり、血を送ったり、食べたものを粉々にしたりして、体は外から取り込んだものを力に変えていることを話します。
 
「外から取り込んだものを自分の栄養にして、残りはうんちやおしっこにして外に出すね」と言うと、笑う子もちらほら。続いて棒のような手と足。足が体を支えていることで、手を自由に使って、手をつないだり、手伝ってあげたりして、外に働きかけていることに気づくようにしていきました。
 
そして、いよいよ動物の学びに入ります。初めにイカについて取り上げました。海を矢のように泳ぎ、槍のような胴体と、それにつながる頭には、大きな目が両わきについていて、頭には10本の足が輪のようについている。そして、輪の中の鋭いくちばしが獲物をかみ切る。
 
人間の形の頭、体、手足を基準に見ると、面白い配置です。(イカから人間を見ると、きっと体の色を警戒色に変えるでしょうが)体の色を変えて感情を表現したり、獲物を捕まえるときは、足をゆらゆらさせて獲物の気を引いたりするところは、親しみさえ湧いてきます。
 
そして、獲物が油断しているすきに、普段は隠している2本の腕(足)をさっと出して、手首に着いたザ・スナップボタンをカチッと合わせ、ペンチのように広げて獲物を捕まえる術は、実に見事です。
 
実際にイカになったわたしが、いつも賑やかな子どもをターゲットにして、腕をゆらゆらさせているすきにガシッと捕まえて見せると、笑いが起こり、捕まった子どもは、なぜか身を固くしていました。そして、子どもたちは獲物を捕まえる役と獲物の役になって意気揚々と動き、再び人間に戻ってノートにまとめるまでには、少々時間がかかります。
 
こうしてそれぞれの動物を人間と比べながら、それぞれの動物ならでは特徴を学んでいきます。どの動物も人間よりはるかに優れた器官を持っている一方で、人間が調和した体を持っていることを、子どもたちの成長に沿いながら気づかせていきます。人間についてのより深い学びは、8年生の「人間学」につながります。
 
5年生になってムササビを取り上げたときは、羽のないムササビが、皮膜をバッと広げて滑空することを学びました。夜のムササビ観察では、親御さん方に見守られながら、雨の降りしきる中、ひさしの下でムササビの滑空を待ちました。
 
ムササビに警戒されないよう、息をひそめて待っていたのですが、ひさしから落ちてくる雨だれが傘に当たっては、バタバタっと音が鳴ってしまい、大慌てで傘を閉じたり、わたしが赤いセロハンを張ったライトのスイッチを押し間違えて、チカチカと点滅させてしまい、今度は周りにいた子どもたちが大慌てでわたしのライトを下に向けたりと、数々の失敗もあり、残念ながらムササビの滑空を見ることは叶いませんでした。
 
内心、肩をがっくりと落としていたわたしに、子どもたちは、穴の開いた落ち葉を見つけては、「ムササビの食べた葉を見つけた」とそっと教えに来てくれたり、「ムササビの鳴き声を聞いた」「夜の授業は初めてで楽しい」と伝えに来てくれたりして、少しずつ気持ちが明るくなってきました。
 
帰り道では、わたしはすっかり元気になり、歌っている子の指揮をしながら、機嫌よくみんなで駅まで歩いていきました。また、いつかみんなでムササビの滑空を見ることを楽しみに待ちたいと思います。

ライター/教員 髙𣘺幸枝