2025.11.26
教員の海外研修 〜シュタイナー教育でつながるブラジルのコミュニティ〜
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.223 2025.11.26
シュタイナー学園の体育科教員として5年目、今年度からは9年生アドヴァイザーも務める木原希先生が、この夏、ブラジルのシュタイナー学校をはじめとする様々なコミュニティを訪問しました。帰国後、現地での体験や、研修を終えて今感じていることについてお話を伺いました。
今回の研修は、東海大学教授・小貫大輔先生が主催するスタディツアーに参加する形で行きました。小貫先生には、これまで学園の性教育などでお世話になっており、そのご縁から今回の学びの機会をいただきました。
シュタイナー教育は世界中に広がっていますが、私自身が知っているのは藤野の学園だけでした。学園の先生方が「行っておいで!」と温かく背中を押してくださり、実現しました。
小貫先生のゼミ生と共に、サンパウロ市内のファベーラ(スラム街)のひとつで、シュタイナーの考えをもとにしたコミュニティ活動を展開しているモンチアズール・コミュニティ協会や、都市部の助産院や病院、シュタイナー学校、また東北部の小さな漁村にあるシュタイナー保育園など、様々な場所を訪ねました。
モンチアズール・コミュニティ協会は、市街地の一段低い土地に小さな家が密集したエリアにあります。そこには保育所や診療所、学童や就労支援、障害者支援など様々な活動が広がっているのですが、1970年代にウテ・クレーマーさんという、シュタイナー教育に携わるドイツ人女性が中心となって始められました。そこで暮らす人々は、訪問者に気軽に挨拶し、子どもが外で遊び、女性がひとりでも歩ける安全な場所でした。
学童の子どもたちと過ごしたのですが、ここには、小学生から中学生までやってきます。ある日、9〜10歳くらいの子どもたちが大喧嘩をしていました。すると中学生の子どもたちが仲裁に入ったのです。大きな子は小さな子にとって頼れる存在であり、良い遊び相手でもあります。共に育っていく存在なのだとあらためて感じました。
あるシュタイナー学校では、バレーボールの授業を見学しました。全員が参加していて、10対10のゲームを行っていました。みんな積極的で、ミスに対しては全員でアドバイスしあって、とにかく参加していく。個人の技術というよりも、全員が参加することで技術を高めあっているのを感じました。クラスみんなでスポーツに取り組む意味を改めて学びました。
ブラジルでも多くのシュタイナー学校は私立ですが、あるファベーラには都市部のシュタイナー学校が経済支援して設立された公立のシュタイナー学校がありました。公立なのでその地域の子どもは誰でも通えます。そうしたシュタイナー学校の在り方もあるのだと知りました。
シュタイナー保育園の見学のため、海辺の自然豊かな村を訪ねました。そこで目にした風景は、私の中にあるどんな言葉でも表現できない美しいものでした。赤土と広がる青い海。砂浜に泊まっている何艘もの漁船。生活は昔ながらの漁業で生計を立てており、自然の恵みを受けた暮らしそのものがありました。そして、そこで暮す人たちは、生きていくために身体を鍛える。それは、魚を捕り、木の実を採り、生活するための身体作り。大人も子どもも均整の取れた肉体を持ち、そこに生きていく逞しさを感じました。
都市、スラム街、自然豊かな村、様々なコミュニティを訪ねましたが、それぞれに課題はあるものの、それに取り組む人々との出会いがありました。私自身も安心して安全に暮らせるコミュニティをつくる一員になりたいと感じましたし、シュタイナー教育のあり方も色々だと知りました。
小貫先生が、「ブラジルで体験したことは日常とは違う感動や感覚があったはずで、新しい体験からは新しい言葉が生まれる。だからこそ言葉に残すことが大事」とおっしゃっていたのも印象的でした。
自分が体験した事が私の中で豊かな経験となり、視野が広がっていくのを感じた瞬間を、言葉として丁寧に残していきたいと思います。そして同時に、学園の子どもたちならこの体験をどんな言葉で表すのだろうと考えると、もし彼らに新しい世界に触れるチャンスがあるなら、ぜひ飛び込んで欲しいとも願っています。
お話/教員 木原 希
取材・文/事務局広報