学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2026.01.21

教育

教室の色 〜子どもの成長に寄り添う空間〜

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.227 2026.1.21

3月の終わりに、年度を終え全学年が次の教室へお引越しをする教室移動日があります。昨年のその日、がらんとした1年生教室で、私はもうすぐ入学してくる新1年生の子どもたちの姿を想像しながら準備をしていました。
 
私たちの学校は教室の色に特徴があります。1年生の教室はカーテンも壁も桜の花びらのようなうす紅色です。天井は曲面を描くように布で覆われ、照明も蛍光灯ではなく温かな色味のものにしてあります。
 
7歳までの子どもたちはまだ世界と自分が一体で、半分夢の中にいるような時期だと言われています。うす紅色の丸みのある1年生の教室は、そんな子どもたちを包みこみ、まどろみから学びに向かってゆっくりと目覚めていく助けをしている、以前はそう捉えていました。
 
確かにまだまどろみの中にいる子どもたちにはそのように働きかけてくれるでしょう。しかし実際に入学してきた子どもたちとこの教室で過ごしてみると、今この空間はそれとは少し違った形で子どもたちを助けてくれていると感じるようになりました。
 
前述したように1年生の子どもたちはまだ半分夢の中にいる時期だと言われていますが、時代と共に子どもたちを取り巻く社会の状況は変わり、子どもたちの様子も以前とは変化しています。のんびりと夢見の状態にいることがだんだん難しくなり、周りの様々な環境によってすっかり眠りから覚め、周囲へ注意が向いてファンタジーに浸るということが難しい子どもたちも見られます。
 
そのため、言葉での声掛けの必要が増えてくるなど、これまでのやり方では今の子どもたちにぴったりこないことも多くなりました。目の前にいる子どもたちに合う授業の進め方を模索しながらの毎日です。
 
しかし一方で、1年生の子どもたちは、夢見と目覚めのはざまで、本当はもう少し夢の世界にいたい、夢の世界にいる心地よさを無意識に求めている、そんな部分があるようにも感じます。教室の温かな空間は、今は少し早く目が覚めた子どもたちに、「まだもう少しここでまどろんでいてもいいんだよ」という心地よさを与え、早く外へ向かいすぎた意識が自分の内へと向かう手助けをしてくれているのではないかと思います。
 
学年が上がるにつれて教室のカーテンや壁の色は変化します。1年生は前述したとおりですが、2年生になるとうす紅色にあたたかな朱の色味が増します。「9歳の危機」と呼ばれる時期を迎え、自分と世界の区別を意識しはじめる3年生では朱、そして4年生では活動的なゴールデンイエローに。心と体のバランスがとれた時期と言われる5年生ではゴールデンイエローとプルシアンブルーが調和した黄緑色、6年生になるとゴールデンイエローの色味が減った緑になり、中等部に上がった7年生、8年生の教室は青になります。自分の内へ意識が深く向かい、考える空間になっていきます。
 
ここでは中等部までの変化を述べてきましたが、このように1年生から12年生まで、子どもたちの成長段階とカリキュラムに合わせて、教室の色や雰囲気は変化します。毎日過ごす教室の空間は、無意識のレベルで子どもたちに働きかけ、成長と学びを助け、支えてくれているのです。

文/教員 長谷川敦子