学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2019.02.20

保護者

子どもの変化には驚かされましたが、私自身にも驚くような変化があったように思います

保護者インタビュー 越野美樹さん(前編)

【越野美樹さん
お子さんのシュタイナー学園への転入をきっかけに藤野に移住をした越野美樹さん。藤野に暮らして2年目となり、「引っ越してきた時には、今のような暮らしは想像もしていなかった。」と振り返ります。現在学園での活動をしながらご自宅で野菜をメインにした料理を伝える料理教室も定期的に開催している越野さんに、シュタイナー学園、そして藤野という町での暮らしについてお聞きしました。

後編はこちら


藤野に来ようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

もともと娘は別のシュタイナー学校に通っていたんですが、通学に時間がかかりすぎて大変だったんです。当時通っていた学校の近くに引っ越すか、藤野のシュタイナー学園に転校し藤野に引っ越すかを考えました。藤野は環境もよく、都心に比べて家賃が安かったり、地域通貨が普及していたりしていて、ここだったら娘を学園に通わせながら、小さく、でも豊かな暮らしが出来るんじゃないかと思って、藤野に移住を決めました。

移住は大きな変化が伴うものだったと思います。

ここに来る前はお惣菜屋さんをしながら、定期的に料理教室を開催していました。食を見つめ直したところアトピーが治った自分の経験を元に、野菜の力を活かす料理をお伝えしていたんです。でも移住となるとその全部を一旦たたむしかありませんでした。子どもを産む前は編集の仕事をしていたので、これから自分に出来ることを考えた時に浮かんだのが、食の仕事と何かを書く仕事でした。なので、野菜を使ったレシピや食にまつわる記事を書くライターの仕事を始めたんです。

そうして始まった藤野での暮らしはどんなものだったのでしょう?

転入生の娘を、クラスの子たちは大歓迎ですぐに輪の中に入れてくれました。内気だった娘が活発になって体力もついて、毎日身体を思いっきり使って遊ぶように。子どもの変化には驚かされましたが、私自身にも驚くような変化があったように思います。

それはどのような変化だったのでしょうか?

ずっと『ありがとう』が言えずに『すみません』と言ってしまうような、人に何かを頼むことが苦手なタイプだったんです。でも、ここに来て自然と『ありがとう』が言えるようになりました。ある日、物作りが得意なお隣さんが、自転車とキックボードを収納する台を届けてくれたんです。家の前に置いてあった娘のキックボードが風でお隣まで動いてしまったのを見て作ってくれて。びっくりしました。家に収納がなくて困っていたら棚も作ってくれて、『材料費は数百円だからお金はいらないよ』って。近所の方に『いっぱいできたから使ってもらえる?』と育てた野菜をたっぷりいただいたり、私は車を持っていないのですが、色々な人が自ら声をかけてくれて車に乗せてくれたり。そうやって助けてもらうたび、最初は『お返ししなきゃ』と思っていたんです。でも、だんだん手を貸してくれる人はやってあげたから何かしてよ、じゃなくてやってあげたい、という気持ちでそうしてくれているんだ、と感じてきたんです。心から『ありがとう』と言うこと、それで十分なんだなと思うようになって。そして、その人に直接お返しすることを考える以上に、誰か他の人を手助けできたらと思うようになりました。助け合いの気持ちが循環するから、豊かに暮らせるのです。

周りの人と助け合いながら子育てできるのはとてもよいですね

困った時は『助けてー』と言っていいんだな、と思えたんですね。生活の安心感があるから子育てがしやすいんだな、と思います。

ライターの仕事をしながら藤野でも料理教室を開いているんですよね

暮らしてみると、思っていた以上にここは食が豊かな土地で、安心な農法で野菜を作っている農家さんがたくさんいらっしゃる。その方たちが作る野菜をびっくりするほど安い値段で買うことができます。肩の力を入れなくてもおいしい野菜が食べられる環境で、その素材を活かす方法をお伝えできたらと思っています。

藤野で開催されている料理教室

藤野という町の暮らしの中で、ご自身にも大きな変化があったという越野さん。後編ではその暮らしによって見えてきた新しい働き方や、これからについて伺います。 

ライター/中村暁野