学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.06.07

保護者

長女の卒業に寄せて

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.159 2023.6.7

◇ 子どもたちのこと

長女が昨年度12年生の卒業を迎えました。九州の綾町に農業実習で伺い、形が悪いことで単価が安くなったり、破棄されてしまう野菜をなんとかできないのか? という問いを持ち帰って来たのが、9年生の頃。その思いを育みつつ、地域の皆さんのご協力も得ながら、12年生で卒業プロジェクトを実践し、商品化から販売まで漕ぎ着けました。

その後は収支や手間、市場経済などの新しい疑問を胸に抱えつつ、その学びを深めるために、農学部を選び進学しました。同じクラスの子どもたちも自分の興味や課題意識などを持ち、試行錯誤してプロジェクトを進めて来ており、その発表には未来の可能性を強く感じさせてくれました。

初等部、中等部、高等部と進む中で、本当にこの学校でよいのだろうかと子どもや親も感じる時期はどのご家庭でもあるのかもしれません。最後まで学ぶことで得られたことが、子どもに取って大きな意味合いを持つということを、12年通った子どもを見て確信している昨今です。

現在も二人の子どもが在籍しており、彼女たちが何に興味を持ち取り組んでいくのかを見守りつつ、その成長を楽しみにしています。

◇ 学校運営のこと

シュタイナー学校の特徴として、教員と親が立ち上げて学校運営するということがあります。世界で1000校以上の学校があり、その国ごとの法律や国民性などで各国の運営方法は幾分か異なっていますが、ドグマ的にならないで柔軟性を持って各学校でも対応を行なっているようです。

当校は2004年に学校法人化するという選択を行い、今でも学校法人の理事は親と教員で構成されており、私自身も昨年度までは委任を受け、理事長を務めさせていただいておりました。親がこのように学校の運営実務にまで関わっていくのは珍しいケースかもしれませんが、子どもの教育の場を支えることに携われることもひとつの喜びでした。

学校における親の役割としては、清掃やしつらえ、送迎、イベントの協力等々、多岐に渡っており、子どもを学校に預けて終わりではありません。無論、お仕事やご家庭の状況で時間的に関わるのが難しい場合や、お子さんの年代等もあります。その際に、この学校内で使われている言葉で「心を寄せる」という表現があります。何らかの役割や活動に実際に参加できなくても、気持ちを持ってもらうことを大切にしています。

現在、経営面では安定した時期に入っていますが、校舎の長期利用のための修繕や建て替えなども検討しなければならない時期に入っています。入学をお考えで、こちらをご覧になっているみなさんもいつか運営として関わっていただくことも出てくるかもしれませんね。

◇ 藤野地域のこと

長女の入学に合わせて藤野に移住して13年目に入りました。旧藤野町はシュタイナー学園以外にもさまざまな活動も盛んな地域です。

元々地元にお住まいの方々のさまざまな活動や、芸術のまちとしての取り組み、パーマカルチャー (※1)の教育拠点や、トランジションタウン活動(※2)、芸術家の主導するエコヴィレッジなど、既存の社会システムとは異なる新しい方法を模索する活動の試みが多くされている地域でもあります。考え方の背景が異なっているとしても、より良い世界を作っていきたいという思いでは共通している点もあり、さまざまな人材がつながり、お互いに支え合いながら活動をしているのもこの地域での面白さでもあります。

今後、個人としてはシュタイナー教育をより地域の方にも知っていただく機会を増やせたらと思っています。また、在宅勤務で、このまちに住みながら働く方が増え、起業も増えたらなと思っており、その後押しが出来る場所として、藤野駅近くで森のイノベーションラボFUJINOというテレワーク&中山間地域交流の拠点運営なども始めたところです。学校コミュニティだけでなく、この地域コミュニティの中で、一人ひとりの力が更に活かせるようになれば良いなと思っています。

ライター/保護者 高橋靖典

※1 永続可能な農業をもとに、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくための考え方。
※2 イギリスで始まった「しなやかで強い、持続可能なまちづくり」を掲げる地域活動。