
2025.07.23
“クローバー”と“ゆりちゃん” 毛刈りの日
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.214 2025.7.23
学園から2.5㎞ほど離れ、緑が生い茂る里山に2頭の羊が暮らしています。
顔と足が黒くグレーがかった毛並みの「クローバー」と、顔と足の毛が真っ白の「ゆりちゃん」です。
太陽の日差しが眩しく、少し歩くだけでも汗ばむある日のこと、クローバーとゆりちゃんは飼い主さんに連れられてお出かけしました。町の美容師さんとそのご主人も一緒です。
今日は、これからもっと暑くなる前に伸びた毛を刈り取る日です。そこへ学園の子どもたちもやってきました。
2年生と3年生の子どもたちは、羊たちの姿を見て「ゆりちゃ~ん、クロ~バ~」ととても親しげに声をかけています。初めて会った1年前には、怖くて近づけなかった子どもも、何度か触れ合っているうちに、ぎゅっと抱きしめてしまうほど仲良くなりました。クローバーとゆりちゃんも、「会えて嬉しいよ」と言っているかのように体を子どもたちの方へ寄り添わせていました。
2年生が毛刈りを始める前に、飼い主さんが、先に3年生が刈り取った羊毛を広げて見せてくれました。大きな羊毛絨毯に「わぁ~」と子どもたちの声が響きます。羊独特の匂いに「臭い」とタオルで顔を覆っている子どもの姿もあり、毛刈りが始まる前には、少し不安そうな様子も見られました。
しかし、20kg近くある羊が美容師さんのご主人と一緒に横たわり、美容師さんがバリカンを使って毛を刈り取り始めると、子どもたちは、匂いの事は忘れ、グッと距離を縮めて覗き込むようにその様子を見つめていました。
横腹の辺りに差し掛かるとバリカンの音は止まり、子どもたちは順番にはさみを渡され、自分の手を使って毛を刈り取ります。皮膚を切ってしまうのではという恐怖心から、根元から毛を切ることをためらっていましたが、飼い主さんから、「片手で毛を抑えて、根元から切るよ」とアドヴァイスを受け、両手を使って毛刈りを行いました。
自分の仕事が終わると、子どもたちは自分の両手の平についた羊の油が、キラキラ輝いているのを嬉しそうに私に教えてくれました。
毛刈りが終わると、クローバーとゆりちゃんは、さっぱり気持ちよさそうに辺りを散歩しています。それを見て「ゆりちゃん、ヤギになっちゃった」と子どもたちは笑顔でその姿を見つめていました。
これから、この刈り取った毛は、お湯を使って汚れや油を落とし、草木から色をいただいて染め、羊毛専用の櫛を使って毛並みを整えます。こうした作業を学園では「手の仕事」の授業として行います。
「手の仕事」では、最初に触れる素材が羊毛です。伸ばす、広げる、丸める、ねじる。
様々な動きの中で羊毛と触れ合うことから始め、2本の棒を道具にして編み物をするときも、羊の毛糸を使います。
いつも当たり前に使っている羊毛や毛糸が、「どこから、どのようにして私たちの元へやってきているのか」、今回の体験を通して子どもたちの「手の仕事」の学びが、より深いものになったのではないかと思います。
ライター/「手の仕事」教員 パラジャパティ佑奈