2025.11.12
〜水彩を通して見る子どもたちの成長の軌跡〜 「学園カレンダー」
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.222 2025.11.12
日々の慌ただしい生活の中で、ふと見上げた夕焼けの空に心を奪われた…というような経験はありませんか?
自然界の美しい色彩に、私たちの心は慰められ、癒され、力をいただいているのでしょう。
色彩は私たちの意識しない深いところに影響を与えているのです。だからこそ、シュタイナー教育では色彩を大切にし、学びの中にはいつも色彩があります。そして、色彩そのものの体験として低学年から水彩画を描いていきます。
シュタイナー教育での水彩画は一風変わっています。
絵の具がにじんだようなふんわりした雰囲気の水彩画をご存知の方も多いでしょう。観る人の心もゆったりと、のどかにするような、透明感のある独特の絵です。これは、ぬらした画用紙に、水で溶いた透明水彩の絵の具で描いていく「ぬらし絵」とも呼ばれるものです。
しっかりと水を含んだ紙に筆で絵の具を広げると、子どもたちの心も深呼吸するように伸びやかに色が広がっていきます。キラキラと輝く水の力、色彩のそれぞれの質、色と色が織りなす響きの中に子どもたちは集中していきます。水彩の授業でのこうした色彩体験自体が、子どもたちにとって、どれほどの癒しとなっていることでしょうか。
低学年では形あるものではなく、ひたすら色を体験します。
学年が上がり、「自分」という意識が次第にはっきりしてくる頃に、形態のあるものを描き始めます。
4年生以降から博物学の学びが始まり、動物や植物を描いていきますが、ここでも、一般的な写実的な絵画とは異なり、動物や植物、その環境、それぞれが持つ質を色彩で表していきます。
授業では、まず教員の活き活きとしたお話を聞き、そこから、子どもたち自身もお話に表されたものそのものになって描いていきます。そうして描いた水彩画は、生きた力強さがあります。そこに息づく世界が現れるのです。
そして、さらに学年が上がり思春期を迎えるころになると、それまでのぬらし絵とは全く違う手法の水彩画に切り替わっていきます。乾いた紙に、ごく薄く溶いた絵の具を何層にも重ねて描く「層技法」と呼ばれるものです。
ぬらし絵と違い後戻りのできないこの手法は、より意識的な取り組みが求められます。もはや、ぬらし絵は、彼らの心に沿うものではなくなってくるのです。こうして、色彩体験も成長と共に、思考的なプロセスへと向かいます。
高等部になると「観る力」を深める課題が続き、色彩による光と闇の表現を経て、色から描く絵画へと授業が展開していきます。より内面が深まっていくこの時期、子どもたちは「描く」と「観る」の繰り返しを通して、自分の内面を掴みとることと客観的な視点を獲得するべく、自分自身との対話を深めていきます。
このように子どもたちの成長と共に変容していく水彩をご紹介しているのが、学園カレンダーです。前身となる東京シュタイナーシューレ時代に運営資金集めのために販売が始まったこのカレンダーも、今年で26年目。私は2014年の制作からデザインのバトンを引き継いできました。
毎年、年が明けると絵の選定日を決めることから始まり、およそ9ヶ月の月日をかけて制作しています。1年生から12年生までの2000枚近い全ての絵の選定作業はとても根気と労力がいりますが、子どもたちの絵のきらめき、成長のまばゆさに、力をもらう作業でもあります。その年々で、魅力ある絵が生み出されています。カレンダーのページ数の制約もあり、全てをお見せできないのが残念なくらいです。
今年も販売が始まっていますので、子どもたちの精神の成長を見守りつつ、日々の暮らしに色彩を添えるものとしてご活用していただけたらたいへん嬉しいです。
そして、ひとりでも多くの方に、シュタイナー教育を応援していただけたらと願っています。
文/教員 黒瀧るみ子
*2026年シュタイナー学園カレンダーは、こちらの公式ストアよりオンラインで購入していただけます。