学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2021.08.04

教育

オイリュトミー授業のめざすところ― 5・6年生 ―

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.112 2021.8.4

1~2年生についての記事はこちら
3~4年生についての記事はこちら

5年生

5年生の姿は「ギリシャ時代」に例えられるように均整の取れた時期です。重さと軽さのバランスが整い調和的な動きもできるようになります。

大切な要素としては幾何学図形(五星形・五角形など)の法則的な動きを学ぶことで世界の美しさを体験することです。また、時間の感覚が大人に近づき聴力も完成に近づくことから、音楽を人間の動きで表現する「音楽オイリュトミー」も始まります。

授業の様子をご紹介します。

幾何学図形―五星形の授業はこんなふうに始まります。まずはみんなで大きなホールの床の上に寝転んで大の字になり頭→右足→左手→右手→左足→頭と流れをたどっていきます。「なんの形?」と問いかけると即座に「星!」と答えが返ってきます。

人間の身体が大の字になるとそこには五星形(星形)が現れます。星形が人間の身体の形と同じだと気づいたとき、自分の身体の中にも世界の法則が働いていると感じることでしょう。それはこれから向かう思春期においても世界に対する大きな信頼となり、大変な時期を乗り越えていく力となるのではないでしょうか。

ひとりで星形を動けるようになると、次は5人同時に動いて1つの星を形成し、その次には五角形を動いたりとバリエーションを変えながら練習していきます。自分の動きを把握しながら友人とも呼吸を合わせて動くのは難しいことですが、そこに生まれる美しい形を体験した時に子どもたちは喜びを感じます。「この形はキュウリの花の形だね」「この形は桃の花だよ」など、自分たちが形作るものが世界の中に存在することに気づき嬉しそうに報告してくれます。

秋になって「調和の8の字」(全員で8の字型をたどって移動する動き)の練習が始まるころ、実際にリンゴを取り出して、縦に切るとそこには8の字が現れ、水平に切ると星形が現れます。自分たちが動いている形がリンゴの中に存在することを発見しながら、みんなでリンゴをかじるのも楽しいものです。

6年生

6年生は大きな変化の時を迎え、思春期に向け成長過程の新たな段階に入ります。それまで軽々と体を動かしていた子どもの動きが重くなってきます。骨格が発達し筋肉も付くことで 実際に体が重くなり動きもぎこちなくなります。

成長していく体に心がついていかず、一時的にバランスが崩れるときであり“反抗期”に入ります。それは外の権威に対抗して乗り越えようとする行為でもあり、見方を変えると内面の自立心が育ち始めるときでもあるのです。

そんな6年生の大切な動きは、音楽の音階の要素としての「オクターブの練習」です。また重くなった体をまっすぐに支えるため「銅の棒を用いた練習」や、論理的な思考を養うために「幾何学図形をさらに発展させた課題」に取り組みます。

授業の様子をご紹介します。

2学期も後半になる頃、子どもたちの目から輝きが消え、憂いのような影が差し始めます。体が重くなりだるそうに歩く姿や、いつまでも壁によりかかり始まりの輪に入ろうとしないなど様々な変化を見せ始めます。

そんな時に必要な動きは「オクターブの練習」です。例えばドから1オクターブ上のドまでの間を体験するのです。オイリュトミーの仕草としては、腕をまっすぐ下から上に伸ばし天から降りてくるものを受け取るような身振りです。重さに抗えなくなる身体の中に天との繋がりを忘れないよう、そして次の段階へ行くためにより良いもの、より美しいものを求め自らその恵みに手を伸ばすような仕草です。

教師の話し方も、より思考に働きかけるように変えていきます。幾何学図形をさらに発展させダイナミックに空間を動いたり、「動きと文法」を結びつけた学びでは、自分の好きな短歌や詩を選び、それを名詞や動詞・形容詞などに分け、ノートに自分の作ったフォルム(動きの形)を書きながらひとりで作品に取り組む練習も始まります。

中等部、高等部のオイリュトミーについては2学期以降にお伝えしたいと思います。

ライター/教員 渡辺志保