学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2017.12.11

教育

「人間とは何か」に基づいた教育

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.22  2017.12.11

子どもは 私たちに与えられた 生命の大きな謎です。
その謎を受けとめて 解いていくものが教育者。
教育者とは 人間形成の謎を解くものなのです。
~ルドルフ・シュタイナー~

シュタイナー教育では、ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した人智学(アントロポゾフィ―)に基づいてカリキュラムを構成しています。人智学を一言でいうと、人間とは何かを考察した包括的な学問のことです。つまり、シュタイナー教育の授業は、人間とは何かという考察に基づいて設計されているということです。そのことが、ひとりひとりの花を咲かせる教育・自由への教育と言われる所以です。

「人間とは何か」=「子どもとはどういった存在か」に基づいた教育とは、それぞれの年次の子どもの成長段階に応じてその都度ふさわしい学びを提供することにほかなりません。さらにそのプログラムは世界中で100年の研鑽を積んで精査されたカリキュラムとなって教室に提供されています。

年次に応じた学びを簡単にお伝えすると、下記のようなことを大切にしています。

1年生

学ぶ喜びと学びへの期待とともに担任教師と出会う

歯の生え変わりと共に、これまで肉体を作ってきた力が、記憶力や創造力を養う力となり学齢期が始まる。子どもたちは、季節や日常のリズムを通して、世界の美しさを感じ、生活の中での秩序を身につけていく。幼児期に引き続き、世界と自分を一体のものとして体験し、周りの人たちを模倣しながら学んでいくことを大切にしている。

2年生

少しずつ世界に目覚め、美しいものとそうでないもの、善と悪などの二極を意識し始める

左と右、内と外、人の持つ気高さとおろかさなど、二重性(対極性)に気づき始める時期でもある。お話のテーマは動物寓話や聖人伝。子どもたちは自分の中にある愚かさや弱さを動物寓話の中に出てくる賢いキツネや気の弱い兎、勇敢なライオン、あるいは乱暴な狼などの中に見いだして受け入れていく。

3年生

孤独と不安を知ると同時に、助け合う心や自分の手足を使って生きる力が育ち始める

これまで一体であった世界と少しずつ距離をもつようになる時期である。そのため、この時期の子どもたちは、孤独と不安を感じると同時に自分と世界の区別を意識しはじめる。古事記のお話や米作りの体験を通して、この世界で生きていく力と自信を養う。

4年生

全体と部分の関係に意識が向き、内面の成長が際立ち始める

全体の中の一つ一つの部分にも意識を向けられるようになっていき、内面の成長に伴い「本当の自分」との出会いが始まる。民族神話、郷土学、動物学を通して自我の芽生えや目覚めにつながる。

5年生

世界への視野が広がり、肉体と内面が調和する時期を迎える

視野の広がりとともに感情が発達して、ギリシャ時代のように肉体的にもある調和のとれた時期を迎える。時間の流れにも意識を向けられるようになり、歴史や地理の学習が始まる。植物学、古代インド、古代ギリシャ、古代中国、縄文・弥生時代など自然界と文明の基礎の学びが役立つ。

6年生

四肢が伸び、骨格が成長し、思春期の入口に立つ

動きに重さが加わり、自分の手足や感情をもてあます思春期初期の兆候が現れる。より現実的なものを求める態度とともに、物事を因果律で捉えたいという欲求も高まってくる。秩序や法をテーマに考える力を要求する学問的な科目が始まる。古代ローマ、奈良・平安時代、物理、天文学、鉱物学などを通して因果関係や美へ向かう感性を育む。

7年生

思春期を迎え感情が激しく豊かになり、新たな世界観への欲求を持ち始める

葛藤しながらも真実に惹かれ、己の探索の道を歩み始める。外界への関心が広がり、地球全体の姿を捉えたいという欲求も高まる。ルネッサンス、大航海時代、平安物語、幾何学の定理などを通して客観的な思考力を育む。

8年生

因果関係や具体・抽象を把握し、自らの思考で世界を捉え始める

人間と世界を有機的なつながりとして捉える総合的な授業が行われる。「革命」のテーマを通じて、不安や苛立ちを含みつつも、一方では強い理想を持ち始める。力学、重力、産業革命、人間学、サバイバル合宿、8年劇などを通して自らの限界にチャレンジしていく。

9年生

社会への関心が高まり、真理・真実を追求する態度が身につく

自立を求める内的感情があらわれる。自分自身からも他者からも距離を置くことで得られる理論性と思考が目覚め始める。より複雑な因果関係を意識的にとらえ、把握する。各々の教科は、専門性をもった教師によって担われるようになる。農業実習の導入。

10年生

学びの中で個性が際立ち始め、自分はどこから来たのかを問い始める

学びの中で一人ひとりの個別性が際立ち、「自分自身とは何か」を問い始める。自らを含めたものごとの発生や変容のプロセスをさまざまな教科で取り上げる。一方で自然科学などの授業を通して法則をつかみ、判断力を養い、共感・反感から自由で明確な思考へと向かう。測量実習、職業実習を通して社会との扉を開いていく。

11年生

論理的思考に柔軟性が加わり、物事の本質をより広く深く探求する

論理的な思考が柔軟性を得て、新しい次元が開ける。外界と内的世界を繋ぐ洞察に関心を持ち、永遠なるもの・無限なるものに触れ、物事の本質をより深く探究するようになる。ミクロな世界の学びをより深めることができる。福祉実習で社会と自分を見つめなおし、航海実習で社会へ羽ばたく準備が整いはじめる。

12年生

多角的に現実を捉えて、自分と世界との関わり方を見つけていく

理想を見失うことなしに世界の矛盾を理解することができるようになる。12年間の成長を包括して「自分と世界との呼応」がテーマとなる。自分はどのように世界と関わり歩んでいこうとするのか、答えを見つける基盤に立つ。卒業演劇、卒業プロジェクト、卒業オイリュトミーへと学びの集大成が結実する。

さらに詳しく知りたい方は、公開月例祭へぜひお越しください

1年から12年までの全ての学年が、学期の学びを発表します。百聞は一見に如かずです。土曜日にお子さん同伴でご覧いただけます。

川本潤(広報室)