学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.07.06

教育

測量実習 三角比の学びを実践的に活用する

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.136 2022.7.6

10年生では「数学I」の内容として、三角比の学びがあります。大人の方は高校時代に学んでいるはずですが、そんなこと習った記憶が…という方には、サインコサインタンジェントと言えば、ピンとくるかもしれません。そのリズミカルで楽しそうな名前とは裏腹に、授業中は意味不明だったという文系の皆様も、ここで読むのを諦めないでいただきたいと思います。
 
10年生20名は、三角比を約2週間教室で学んだあと、実践的に応用すべく、1泊2日で測量実習に挑みました。三角比とは、簡単に言うと直角三角形では、1つの角度と1辺の長さがわかれば、他の角度も長さもわかるという考え方。公式に当てはめて計算すれば、実際に測りえない距離でもわかるという便利な計算方法で、そこでサイン、コサイン、タンジェントが使われます。例えば、湖のこちらの岸からあちらの岸までの距離や、向かいの山の高さなどが図れるのです。三角比そのものが測量のために紀元前2世紀に考え出され、18世紀には日本にも伝わり、伊能忠敬もこれを利用して地図を作りました。
 
実習では、様々な特徴のある場所を三角比を応用した様々な測り方で測っていきます。周りに障害物のない広場は放射法で、真ん中に田んぼや池がある場所はトラバース法で、建物などがあって測りづらい場所は三角測量で、公園全体を通る長い道は、歩測とメジャーの両方で測りました。2日間、測っては計算し、測っては計算し、地図を起こしていきました。
 
初日の午前中はどのグループも器機の扱いに慣れず、また、どこを測って数値を出すと計算ができて、何に気を付ければ地図が正確に起こせるのかがよくわからず、やみくもに測っていました。それでも測ってみて、不慣れでも公式に当てはめて計算するうちに、確かにわかってくる長さによって地図が書けるようになると、あっそういう事かと合点がいきます。だからここでは、正弦定理を、こちらは余弦定理を使う必要があるのだと納得すると、作業も早くなります。午後の作業は、驚くほどスムーズに進みました。中には早く作業を終わらせて遊ぼうという気持ちが作業を雑にして、せっかく測って、計算をして地図にしてみるとどうしても合わずに謎の空間ができてしまい、測り直しをするというグループも。
 
使った道具もまた手作りの傑作品で、三脚の上に、水平の板を置き、その上にプラスチックの分度器を固定し、角度を測ることのできるような器機でした。それに加え、メジャー、三角コーン、遠くから測るべき点が見えるようにする長い棒。この4点と記録用紙を持って、角度を測る人、記録する人、棒を持つ人など役割分担して測りました。
 
初日の夕方には、どのグループも計測を終え、どこが難しかったか、どうやったら測りやすいかなどお互いに情報交換をしました。計測したいくつもの数値を元に、計算して地図を作ること、それはただ公式を習って、練習問題を解く以上の真剣さを求められるものでした。
 
実習後、各自が趣向を凝らしオリジナルの三角比応用問題を考え、それをまとめた問題集を作成。例えば、パラグライダーで飛んでいる高さを着地点までの距離と角度で計算したり、靴のサイズが24センチでかかとまでの角度が45度の時のヒールの高さを計算で求めたり、それぞれがどんな問題を作ってくるのかに興味を持ち、面白がってお互いの問題を解きました。それは文系や理系といった分類を超え、三角比を理解した上で、お互いの視点をも理解できるような体験になったことでしょう。
 
ライター/教員 廣田聖子