2026.03.18
たくさんの視点を持って世界を見ること
卒業生コラム 21期生 勝田慎平さん(後編)
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.231 2026.3.18
エネルギー企業で研究職として働く勝田慎平さん。前編では、学園の学びを通して研究の楽しさを知ったお話を伺いました。後編は、高校時代から現在、そしてこれからについてお話を伺います。
高校進学は外部を選ばれたのですよね。
自由研究で「研究者になりたい」という思いが明確になり、理系科目の学習環境が整った進学校に進みたいと考えました。両親も納得してくれました。
受験のために塾へ通いましたが、テスト勉強の経験がなく、最初は数学がまったくできませんでした。でも国語と英語はできた。テスト経験がなくても、自分に養われた力があると気づけたことが支えでした。
やってみると、いわゆるテストのための「勉強」も刺激的で楽しかったです。
実際に進学してみて、どう感じましたか?
「本当に違うんだな」と思いました。高校の先生がたも熱心で素晴らしいかたがたでしたが、人としての信頼の深さがシュタイナー学園の先生がたは特別だったんだと感じました。
何があっても見離されないと思える包容力で本気で向き合ってくれていたから、自分も本気でぶつかれた。小さいころにそういう人に出会えていたことは、とても大きかったと思います。
部活動の経験も印象的だったそうですね。
高校で吹奏楽部に入ったら練習が厳しくて、辛いと感じることもありました。シュタイナー学園でもオーケストラに入っていたのですが、負荷を感じるような練習をすることはなかったんです。高校の部活では、そんな負荷のある練習を通して得られる成長もあるのだと知ることができました。辛さの中にも意味があるんだ、と別の視点から見ることができた。
物事にはいろんな見方がある。正しさも不確かさもあるし、楽しさもあれば辛さもある。でも辛いと感じた時にそう思えたのは、シュタイナー学園で人間力を育ててもらえていたからだと思います。
大学ではどのような学びをされたのですか?
エネルギーを学ぶため、京都大学工学部電気電子工学科に進学しました。学びたいことを学び、陶芸部に入ったり、アルバイトをしたり、やりたいことばかりをした大学生活でした。
大学院ではマイクロ波工学を専攻しました。無線で電気を送る技術です。「電気を作る」ことから始まった関心でしたが「電気を届ける」ことを学び自分の幅が広がりました。卒業し、今はエネルギー企業で太陽光発電などを扱う研究職に就いています。
これからしていきたいことはありますか?
前提として、環境問題やエネルギー問題に関心があり、社会を良くしたいという思いがあります。でもその前に、自分が幸せであること、健康であることを大切にしたいとも思っています。今は戦争など大変な問題が多くあり、課題を感じて苦しくなってしまうこともあると思います。でも世界を良くするためには、まず自分が幸せでいること。多くの人が「自分は幸せだ」と思えたら、自分以外の世界にも手を差し伸べられるのではないでしょうか。
今の仕事は自分を幸せにしていることでもあり、同時に社会の課題に対しても向き合えることだと感じています。
シュタイナー教育で得たものについて教えてください。
ふたつあります。
ひとつは、先生やクラスメイトとの関わりを通して物事にはいろんな視点があると思えるようになったこと。
もうひとつは、言葉で説明できないものを、そのまま受けとる力です。
音楽や芸術、数値化や言語化がしにくいものを「よくわからない」と拒絶する人もいるかもしれないけれど、それをそのまま受けとる。「よくわからない」ものを受けとることで、自分の世界は広がっていくのだと思います。
勝田さんのまなざしの奥には、学園で育まれたひろい視点の力が、確かに息づいています。
文/保護者 中村暁野