学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2018.12.04

保護者

わたしはたくさんのものを持っているわけではないけど不安がないんです

保護者インタビュー 中村綾さん(後編)

【中村綾さん】 
学園に4年生の娘さんが通っている中村綾さん。娘さんの入学を機に藤野に移住され、自分のやりたいこと、できることをしながら日々を楽しんでいます。後編では学園との関わりや、中村さんが藤野での暮らしで出会ったこと、気づいたことを伺います。

前編はこちら


藤野での暮らしで変わったことはなんでしょうか?

去年から畑を始めました。といっても農家さんのお手伝いです。夏場は朝の5時半くらいから畑に立つのですが、朝の畑って最高に気持ちが良い。そこに立っているだけでいろいろなものが流れていき満ちていく、そんな場所です。有機農業って基本は草取りが仕事なんですよね。草取りやトマトの芽かきなど何も考えないで体を動かす作業がたまらなく好きです。その他に、自分で体を整えることができるような気功の教室をやって、わたしが大好きな場所である「ふじのタンポポ」という生活介護事業所の事務にも関わり、あとは学園の活動も。藤野は例えば、自分の中にあるちょっとした特技をトライできる場がたくさんある。そしてみんな何かを始める時の理由が「好き」という気持ちから始まっているように思います。そんな好きなことをしている大人たちにたくさん出会って、色々な場所を移り住んできた長女も「はじめて『地元』ができた」と言っているんです。

生活介護事業所「ふじのタンポポ」にて

学園との関わりはどうですか?

娘が学校で学んでくることを聞くことが日々楽しいです。クラスの会でその時学んでいることを先生から聞くのもワクワクします。シュタイナー学園は親の関わりが多そう、というイメージがあるかもしれませんが、やりたい人がやりたい部分で学園と関われる。わたしは学園のウェブライターやまるまるマルシェの運営にも参加していますが、どれも興味があって自分が積極的にやりたいことなのでとても面白いです。藤野という地域にも共通することなのですが、自分の価値観を人に押し付けることなく、弱い部分も受け入れてくれる人が多い場所だなと感じています。自分のありのままで暮らしている人が多いけど、一人一人がちがうからこそ頼み頼まれあったりできる、そんな心地よさがあります。暮らしやすい大好きな場所です。そんな場所で暮らしていく中で、今までついついスケジュールをつめがちでそれを消化していくような暮らし方をしていたかなって。本当にそれがやりたいか?楽しくできるか?と考えるようになりました。

子どもが成長していく過程では、時には苦手なことに取り組んだり、努力して乗り越えなければならないこともあるかもしれないですが、シュタイナー教育を受けた子どもたちの多くは、自分のやりたいことを見つけ全力で向かっているように見えます。それは意味のない苦労をしたり何かを犠牲にする頑張りや努力とは全く別のものに思います。

わたしは世間でいうシングルと呼ばれる母親ですが、こうしなきゃいけない、もっと頑張らなきゃいけない、みたいに思ったことはないんです。先のわからない何十年後のために頑張る、のではなくて、今を大事にしたいし今を楽しみたい。わたしが娘たちに胸を張って見せることができるのはそれくらいなので(笑) 娘たちも存分に自由に生きて欲しいです。上の娘には「その年になっても楽しそうでいいね~」なんて最近は言われるんですよ。


わたしはたくさんのものを持っているわけではないけど不安がないんです。老後の心配とかね。と笑う中村さんは、自分を信じる力や自分を楽しませる力、たくさんのものを持っている女性だと思いました。そしてそんな母親の姿を見て感じて育つ子ども達もまた、自分を信じ、自分を楽しませる力を育んでいくにちがいない、とも思えるお話でした。中村綾さんありがとうございました。

ライター/中村暁野