学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.03.09

卒業生

学ぶこと自体はやっぱりずっと楽しかったんです

卒業生コラム 第21期生 塚本亜里菜さん(前編)

早稲田大学国際教養学部に在籍し、現在オランダのライデン大学に留学中の塚本亜里菜さん。学生として学びながら伝統工芸材料の新たな可能性を探求していくアップサイクル製品ブランド「sAto」を立ち上げるなど、独自の活動をされています。日本とイギリスにルーツを持ち、小学校から藤野のシュタイナー学園で12年間学んだ塚本さん。シュタイナー教育を受けるなかで感じたこと、得たことをお話ししていただきました。

後編はこちら


 シュタイナー教育との出会いを教えてください。

幼い頃から毎年、夏は家族で父の故郷のイギリスに帰っていたのですが、そこでシュタイナー幼稚園に少しの間行ったりしていました。日本でもたまにシュタイナー幼児教育の親子の会に参加したりしていました。小学校に上がる前に、両親が藤野を訪れる機会があり、とても気に入り移住することになりました。なので、学園の為に引っ越したというより、藤野が気に入って移住した形です。その後シュタイナー学園に入学できることになり、1年生から学園に通い始めました。

学校生活はどうでしたか?

学校という初めての環境で最初は緊張していたのを覚えていますが、徐々に楽しいと思うようになりました。クラスは24人でした。学校に行くと新しいことを知ることができる。知らないことを教えてもらうことはとても楽しかったです。          

とくに印象に残っている学びはありますか?

ひとつのテーマを集中して学べる『エポック授業』がいつも楽しみでした。いろいろな国の神話を先生が話してくれるのを夢中で聞いていたのをおぼえています。あとは古賀先生の音楽の授業です。クラスメイト全員がゴングなどの響きのある楽器を持ってその場で音を作りあげる授業がありました。即興で演奏し、互いの音を聴き合いながら、みんなでその音楽の終わりをみつける。お互いの音を聴きながら、音を作りあげて、終わりを見つけていく過程がとても楽しかったのを覚えています。

放課後はどんな風に過ごしていましたか?

母が畑をやっていたので、放課後はよく一緒に畑に行っていました。畑作業を手伝う傍ら、畑にある木に登ったり、近所のおじさん、おばさんと話したり。木登りが大好きでした。あと、小学校4年生の時から地域のお囃子連に入り、練習に励んでいました。 

高学年になってくるとシュタイナー教育や学校への反発が生まれることもあると聞きました。亜里菜さんはいかがでしたか?

私たちのクラスは途中で担任の先生が変わったこともあり、7〜8年生の頃は先生方には申し訳ないくらい反発した時期がありました。  
先生の話をちゃんと聞こうとしなかったり、言われたことに納得がいかなくて何度も先生方と話しあったこともありました。初中等部最後の集大成である8年劇もどうなることか…と思った時もあったのですが、「やる時はやる」という感じで最終的には形になりました。形になるよう先生が導いてくださったと思いますし、劇に取り組むことや、学ぶこと自体はやっぱりずっと楽しかったんです。

高等部に上がる時に外部の学校に行くことは考えなかったのですか?

いわゆる高校生らしい「部活」をやってみたいな、と心に浮かんだりもしたのですが、やっぱりシュタイナー学園での日々が楽しかったし、高等部の学びを自分もしたい、という気持ちがありました。なので大きな迷いはありませんでしたが高等部に上がって10年生になった頃、自分の置かれている環境に違和感を覚えました。
藤野や学園というとても狭く、守られた環境が窮屈に感じ、外に出てもっと広い世界を見たいと思うようになりました。そこで自分で世界中のシュタイナー学校にメールを出し、交換留学先を探しました。そして11年生の時にオーストラリアのシュタイナー学校に留学しました。

オーストラリアに行かれて、どうでしたか?

とても楽しかったのですが「こんな世界があるんだ」という衝撃を受けました(笑)。同じシュタイナー教育の学校ではありますが、日本や藤野とはちがう部分も多くありましたし、同じ歳でもこんなにも違うんだ、と文化や考え方の違いを身をもって感じることができました。それはすごく新鮮な体験で、自分のいた環境を客観的に見ることができました。その中で、自分がいた環境の良い部分が見えたり、ずっと続けてきたお囃子の伝統文化としての魅力に気付く機会にもなったと思います。留学をきっかけに、日本でどんどん失われている伝統文化の継承に関心を持ち、12年生の卒業プロジェクトのテーマに『祭囃子の継承〜人と地域の繋がり〜』を選ぶきっかけにもなりました。

シュタイナー学園の12年生は集大成のさまざまな課題や発表があり、とても忙しそうですが、亜里菜さんは大学受験もされたんですよね。

はい。学ぶことはずっと楽しかったので、自然と大学に進学することを決めました。たくさんのことに興味があり絞ることできませんでしたが、英語で授業を行うことと、留学に行ける大学に行きたいと思っていました。 そこで幅広い分野の学びができ、英語で授業が行われ、1年間の留学が必須になっている早稲田大学の国際教養学部への進学を考えました。シュタイナー学園の12年生は、卒業演劇、卒業プロジェクト、卒業オイリュトミー公演もあり、力を入れて取り組む課題が続きます。それらと並行して受験の準備をするのは…本当に大変でした(笑)。大変ではあったのですが、それぞれにグッと集中して向き合っていったので、今振り返るととても充実していて「楽しかったな」という思いも湧きます。


ずっと学ぶことの楽しさを感じていたという亜里菜さん。後編では学園最後の12年生の1年間の出来事や、ご自身で決めた大学進学〜現在に至るまでのお話を伺います。

ライター:中村暁野

*塚本亜里菜さんの活動については下のリンクでもご覧いただけます*

【sAto】
オンラインショップ:saaaaato.handcrafted.jp
インスタグラム:https://www.instagram.com/sato_of_marterials/

【早稲田ウィークリー掲載記事】
~金糸×ヨットの帆~ ものづくりを通して人、社会とつながる – 早稲田ウィークリー (waseda.jp)