学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.03.01

教育

シュタイナー学園の8年劇

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.152 2023.3.1

雪の降る2月の週末、今年も8年劇が行われました。8年(中学2年)生たちの奮闘の様子を、担任の増渕智先生にお話しいただきました。


シュタイナー学校では8年生で劇を発表します。初中等部の学びのしめくくりとして、劇場を借り2時間近い作品に取り組みます。演劇は台詞こそ書かれていますが、人物の気持ち、セットや音楽、舞台の使い方など台本に書かれていないことを読み取りながら創造的に作り上げていく作業です。意見が合わなければたくさん話し合い、その過程で友の良い点に気づいたり自分自身の力を発見したりします。

生徒自ら台本を選ぶ12年生の卒業演劇と違い、8年劇の台本は教師が選ぶことも少なくありません。けれど今年の8年生は、自分たちでやりたいという主張のあるクラスでした。ですから台本も担任がいくつか候補を示し、自分たちで選んでもらおうと思いました。しかしなかなか心に響く作品がなく、子どもたち自身も時間をかけて探しました。ただ、話し合ううちに自分たちがやりたい作品の方向性が見えてきました。演じる側も観る側も楽しめるものを、というのが全員の気持ちでした。夏休み直前でシェイクスピアの喜劇『から騒ぎ』に落ち着いたときは満場一致。自分たちが納得して決めたのでやる気もあります。

台本が決まってからもセット、音楽、衣装、道具など決めることは山ほどあります。子どもたちはとことん話し合いますが、まだ時間を見通す力が不十分です。担任はタイムスケジュールを示し、子どもたちのやる気が満たされるよう配慮しつつ、手助けをします。放課後や冬休みも劇のために集まり、大変ではありましたが楽しそうに取り組んでいました。

劇での教師の役割は、子どもたちが持っている良さを引き出すことだと思います。どうしたらその子の力が伸び伸びと劇で発揮されるのか。例えば普段は声も小さく人見知りの子でも、積極的に前に出るような演出をつけると、とても堂々としていきました。いろいろなアイデアがある子にはどんどん試してもらい、あまり口出しせず客観的なアドバイスだけしました。また、子どもたちが疲れている時は笑いが起こるようなゲームでウォーミングアップをして気分を盛り上げたり、あえてゆったりしたスケジュールを組んで体を休めさせ、自発的に練習に向かえるようにしたりしました。

実は本番1週間前にはまだ台詞も不完全でした。でもそれぞれが週末に猛練習し、劇場に入ってからもあちこちで自主練習を始め「ここはこうすると良いよね」「もっとできるよ、声ももっと出そう」と協力していました。誰かを責めてもうまくいかない。励まし合ってより良いものにしようとする姿を見てとても嬉しく思いました。

3回の本番では客席の反応も毎回違い、温かい拍手をもらいました。8年劇では友達や先生との関係や自分自身の葛藤など様々な課題が出てきますが、それを乗り越えるチャンスでもあります。乗り越え方は自分たちで見つけるしかない。だからこそ乗り越えた時の自信につながるのでしょう。劇を通してクラスのつながりはさらに強くなり、それぞれが自分たちの力を引き上げられたと思います。高等部でもお互いを信じ高め合う仲間であってほしいと願っています。

お話/教員 増渕 智