学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.02.15

教育

なぜ黒板画を描くのか

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.151 2023.2.15

シュタイナー学校を訪問されて、教室へ入った方の目に最初に印象的に映るのは、黒板画ではないかと思います。1年生から8年生まで、教室の扉開きのふたつの黒板には、担任の先生によって丁寧に絵が描かれています。描かれる絵は、メルヘンや神話の中の一場面や子どもたちが学ぼうとしている分野の特徴的な絵であることが多いです。「誰が描くのですか? なぜ描くのですか?」度々される質問にはいつも、「授業の予告編なのです」とか「子どもたちがこれからどんな学びをするかをワクワクしながら待つように」と答えてきました。 

今回黒板画について考える機会をもらい、私自身が初めて出会った黒板画が浮かんできました。それは東京シュタイナーシューレで目にした黒板画でした。小さな教室の黒板には八木重吉の詩「琴」の言葉とともに、ひとつの竪琴が紅葉の木立の中に描かれていました。 

「秋の美しさに耐えかね 琴は静かに鳴りいだすだろう」 
その絵にはまさに「静寂」が描かれ、絵から生み出される静けさと美しさに心から驚き、描かれた情景の世界へと入り込んでいくようでした。そのような絵を目にしながら子どもたちが成長していく学校なのだ、と感動を覚えたことを記憶しています。 

さて、今自分がシュタイナー学校の教員となって黒板画を描き始めてからもう十数年間経っております。なかなか自分が思うようには描けないなというのが本音ですが絵の上手い下手に関わらず、どれだけ心をこめて丁寧に描いたかが、大切なのだなと感じています。

「今度動物を勉強するんだよね。早くしたいな」と嬉しそうに黒板に描かれた馬の絵を見ながら動物学を楽しみにしてくれたり、お話を聞きながら「あ、あの絵のお話だ!」とにこにこした表情になったり。「これ(自分も)描くんですか!」と描かれたフォルメンを見て驚愕したりと、子どもたちの感情へ黒板画はとてもよく働きかけるものだなと思います。

高学年では黒板画をエポックノートにうつして描き表紙などにすることも始めるのですが、江戸時代の安藤広重の浮世絵の絵を描いたときも、ルネサンスの画家たちの絵であっても、生き生きと集中して取り組む子どもたちの姿がありました。担任の描いた絵は、子どもたちの心の中に学びと結びついたひとつの絵として残っていくのかもしれません。 

黒板画は、毎日子どもたちが目にするものですから、その絵から敬虔さや温かさ、美しさなどを受け取っていくものでもあると思います。聖フランシスコの絵、旧約聖書の絵、植物や鉱物の絵などたくさんの絵を描きながら、いつも子どもたちへ本質的なものが伝わるように、願いを込めて描きます。「子どもたちの魂へ直接働きかける作用がある」と同僚は言っていましたが、その通りなのでしょう。 

「どんな絵に変わっているか、始業日が楽しみなんだ」とある時言ってくれた子どもがいました。初めて見た黒板画のような魂がゆさぶられるような絵はなかなか描けませんが、子どもたちへの働きかけを信じて、そして励みにしながら心をこめて描いていこうと思います。 

ライター/教員 加藤優子