2024.04.17
子どもたちならではの響きに出会えるライアークラブ
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.181 2024.4.17
ライアーは、シュタイナー学校や治療教育の分野で用いられる、繊細な響きの楽器です。藤野移転以前から、催事などで生徒が演奏する機会はありましたが、ライアーの響きがもっと学園いっぱいに広がるようにと、9年前に現在の形でライアークラブが始まりました。
当初は6年生から8年生までの活動を想定していましたが、高等部に進んだ生徒たちが練習時間を捻出してコンサートに参加したり、高等部の部活動として登録できるよう奔走したりして、今では5年生から12年生までに広がり、総勢28名が在籍しています。これだけの人数による子どもたちのライアー・アンサンブルは、日本中を探しても、なかなか見当たらないことでしょう。
様々な大きさのライアーを曲目に応じて自由に持ち替え、部員どうしで融通しあって弾くのも、ここならではの光景かもしれません。クラブで弾いているライアーは、個人的にご寄付・ご貸与頂いているものも多いのですが、学園が学校法人となって授業に必要な楽器を持てるようになったことも、多人数でのアンサンブルを支えてくれています。
週に一度、放課後の音楽室に集う子どもたちは、実に賑やかです。その日のできごとなどを話しながらやってきて、ベンチや譜面台を並べ、思い思いの場所に座って練習を始めます。春は入学式で新入生を迎える演奏から始まり、祝祭や学園祭、秋の藤野まるまるマルシェ、冬のクリスマスコンサート、そして3月には学園コンサートなど、発表の機会は多彩です。また、ライアー団体主催のユース講座に参加したり、時には幼稚園や子ども園、高齢者施設などで弾かせて頂いたりもします。
レパートリーは、バッハやモーツァルトなどのクラシックから、イギリス民謡、ジブリ映画の主題歌、ビートルズ、そして現代の作曲家によるライアーのための曲まで、多種多様。これ弾きたい!という希望を最優先に曲を決め、発表に向けて、ソロや小さなグループでの練習、全体での合わせなど、いつも時間が足りない状態なのですが、子どもたちから焦りは感じられません。もう十分に練習した!と、コンサート直前まで鬼ごっこで走り回ったり、友達とふざけていたり。それでも本番になると、先ほどまでの喧騒とは打って変わったように集中し、柔らかくて、まっすぐ心に届くような響きを聴かせてくれます。
不思議なもので、子どもたちのライアーの響きは、大人とは異なります。練習量や曲の難しさなどとは関係なく、強いて言えば、けれんみがないということでしょうか。等身大の響きと言えるかもしれません。聴いている人の心も、ほろほろと解けていくような軽くて優しい音色。酸いも甘いも噛み分ける? 大人には、ちょっと真似のできない響きなのです。
でも、もしかしたら、子どもの頃からライアーに親しんだ人は、大人になっても、その頃の響きを失わないのかもしれません。誕生してようやく100年を迎えるライアーという楽器で、それを確かめられるのは、これからです。
ライター/オイリュトミーピアニスト・ライアークラブ指導者 神田純子