学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2025.09.03

卒業生

学園の授業は、「飽くなき探究心」を刺激してくれる授業ではないでしょうか

卒業生コラム 22期生 岩下花凜さん(後編)

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.217 2025.9.3

シュタイナー学園卒業後は大学で国際関係論を学び、その後外資系企業へ就職。現在、社会人2年目。後編では、高等部での経験から大学時代、そして現在までのお話を伺いました。

前編はこちら


 
進路として古文を学び続けることは考えていたのでしょうか。
 
11年生のとき、ブラジルへ交換留学に行きました。そこで貧富の格差に衝撃を受けたんです。ブラジルの学友は自宅にプールのある子もいて、一方でそこから少し離れたスラム街には貧しい子どもたちがいて。また、同世代の子が政治の話を普通に行っていることにも刺激を受けました。自分は恵まれた環境にいる。古文のようにやりたいことも大切だけれど、なにかやるべきではないのかと考え始めたのです。
 
その後、途上国や開発国へ関心が向かい、卒業プロジェクトではフィリピンの貧困問題をテーマに選びました。現地で支援に取り組む団体に関わり、スラム街でのボランティアにも参加しました。
 
卒業後の進路は、好きな国文学と開発支援、どちらにするか悩み、結果的には国際関係学部で開発支援を学ぶことにしました。
 
大学で開発支援を学ばれていかがでしたか。
 
大学に入学した年はちょうどコロナ禍ですべてオンライン授業。3年生になって、やっと対面で集うことができるようになりました。ただ、支援に関わっても、結局自分にはご飯も寝るところもある、学べる環境もあるということに、わだかまりが募ってきてもいました。自分が支援を学ぶということが、きれいごとに感じられてきて。もっと根本的な社会構造へと関心が移っていったんです。そして、データや数字よりも、人と人との関係性を学ぶ社会学に目が行くようになりました。
 
そこからは、とことん学びました。取れるだけの授業を取り、授業が終わると教授に張り付いて学ぶ。それを4年生まで。教授にはそんなに学ぶのが好きなら大学院へ進んだら? と言われたほどです。大学に残って学び続ける選択肢もありましたが、なんだかやり切った感があって、一旦就職してみようという気になりました。母の教えで、「チャンスの神様は前髪だけしかない(好機が来たら素早く掴みなさいの意)」「自分で選んだ道は自分の力で正解にすれば良い」という言葉を心に留めています。
 
次のステップへ進んだのですね。
 
仕事は営業を担当しています。入社後に、荒波に揉まれるような部署でお願いします、とお伝えしたんです(笑)。
 
人が好きなのは小さなころからなのですが、お客様を観察して、何度か伺っていくうちに関係性ができてくるのも嬉しいです。営業というのは義理人情のある世界で、営業というより商いという言葉が合うかもしれません。まだ経験不足で大変なこともありますが、資料を作りながら、こういう提案をしたら喜んでもらえるかなと思うと、乗り切れます。体力と記憶力は自慢ポイントかもしれませんね。
 
最後に、シュタイナー教育で得たと思うものを教えてください。

学園の授業は、「飽くなき探究心」を刺激してくれる授業ではないでしょうか。私は毎日学ぶことが本当に楽しくて。ストーリー仕立ての算数や国語は今でも思い出します。大学で、レポートやエッセイを提出する機会が多々ありましたが、学園で同じようなことをやってきていたので苦労したことはありません。
 
同級生にも恵まれていました。友人は私のことをバイアスをかけずに認めてくれる存在です。気が合う、合わないはあったとしても、この人たちは大丈夫と確信しているから、安心できる。その関係性が崩れることはないと思います。
 
実は、大学卒業後の進路に悩んでいた時、学園のイベントで担任だった加藤先生に偶然お会いしたんです。悩んでいると話すと、「大丈夫。自分の思うままにやってみたらいいのよ」と。学園は自分がいつでも帰れる場所です。


朗らかな笑顔の奥にしっかりとした軸を持つ花凛さん。常に前向きに進もうとしている姿が印象的でした。学ぶことへのワクワク感は職場でも続いているようです。花凛さんの今後の活躍を楽しみにしています。

ライター/松本朋子(事務局広報)