学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2017.10.16

教育

お父さんのためのシュタイナー入門

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.14  2017.10.16

幼児教育に定評のあるシュタイナー教育は主に母親主導で選ばれてきた側面があります。シュタイナー学園へ見学に来る方でも、「私は入学させたいけれど、夫を説得するにはどうしたらいいでしょうか」というママさんの相談を受けることもあります。そこで、今回はパパによるパパのためのシュタイナー教育入門と題して、男性向けの「合理的な」お話を少し。2点に絞ってお届けします。

①    世界一の教育

②    未来型かつ100年の成果

「世界一の教育」

世界には色々な教育がありますが、文化と宗教を越えてひろがる教育手法は珍しいものかもしれません。シュタイナー学校は80ヵ国1100校以上にひろがる学校で、宗教系機関を除けば世界最大の学校となります。アジアで最初のシュタイナー学校として誕生した我が校を皮切りに、近年、中国では50校を超える開校ラッシュで台湾には公立のシュタイナー学校も誕生しました。また、シリコンバレーではIT長者達がこぞって我が子を入学させることでも話題になりました。さらに、特筆すべきは、シュタイナー教育はひとえに自発性にのみ基づくものであることです。今日までシュタイナー学校を世界に広めることを目的とした組織は一度も作られたことがありません。我が校をはじめ多くの学校は、親が自分の子どもに受けさせたいという理由で自主的に発生していきました。

また、ここまで世界中にひろがった背景には、当初から全ての人に開かれていたという経緯があります。1919年、シュトゥットガルト最初のシュタイナー学校は、ヴァルドルフ・アストリアたばこ工場労働者の子どものために、アントロポゾフィーの人間観に立って創設されました。けれども、当初からこの学校は、労働者の子どもだけを対象にしたわけでもアントロポゾフィーに精通した子どもだけを対象にしたわけでもありませんでした。当時は珍しい男女共学の体制が表しているように、教育の出発点に世界観や境遇や才能や性別が影響してはいけないという理念がありました。実際、労働者も医者も弁護士も全ての子どもが同じ教室で勉強したのでした。

「未来型かつ100年の成果」

おそよ10年ごとに改訂されてきた学習指導要領の最新版が発表され、2020年から小学校で全面実施される「教育改革」の指針が示されています。大まかに並べると、「社会に開かれた教育」、『「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へ』、「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」、「主体的・対話的で深い学び(=「アクティブ・ラーニング」の視点)」などのキーワードが挙げられます。また大学入試センター試験の廃止など、受験勉強のあり方まで大きく変わろうとしています。

加えて、子どもたちが巣立つ未来の社会では、人工知能が人類を越えて社会進出するシンギュラリティをむかえ、資本主義経済は「成長」の限界をむかえ、これまでの知識偏重で競争原理の「サラリーマン養成所」と揶揄されるような教育原理では立ちいかなくなってくることは教育指導要領に示されるまでもなく明らかです。

そうした未来に備えて、「人間とは何か」の人智学(アントロポゾフィー)に基づくシュタイナー教育の目指すとことは、それぞれの子どもたちが自分にあった花をめいっぱい咲かせることです。100年前からアクティブラーニングを実践し、様々な実習プログラムで社会に開かれた学びの機会が豊富にあり、教科間の垣根を越えて考える力を養う成熟したカリキュラムがあります。さらに、一切の評価判断を押し付けない環境が、高い自己肯定感と主体的な生き方につながっています。

2019年には100周年をむかえるシュタイナー教育なので、世界中には卒業生を対象として多くの調査があります。その中の一部をご紹介します。スウェーデンでは「現在の生活に満足しているか」の問いに87%の人が「非常に満足」「満足」と応え、スイスでは「職業上の成功度は:望んでいる教育や仕事を得られたか」の問いに80%の人が「イエス」と応えています。総じて「健康的」「責任能力」「イニシアティブをとる力」などが高いという傾向もあがってきています。ちなみに世界の卒業生はこちらで見ることもできます。

シュタイナー教育は、将来の社会が要請する人材を育成しているわけではありません。逆に、人間とは何かに基づいて自分らしさを全うする生き方が未来的なのかもしれませんが。

川本潤(広報室)