学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2018.01.09

ほんとうの「意志」を育てるために

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.25  2018.1.9

皆さま、新年あけましておめでとうございます。

少数精鋭で始めたこのニュースレターも、おかげさまで少しずつ読者が増えてまいりました。

本年も様々な情報をお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ときどき、シュタイナー学園に入学を検討されている保護者の方から「本人の気持ちを尊重したいので、子どもにも学校見学や体験授業の機会をつくってほしい」というお声をいただくことがあります。

実はシュタイナー学園の「学校見学」や「体験授業」は、すべて大人の方(保護者の方)に向けたもので、お子さんの参加は基本的にご遠慮いただいています。(※高等部に限り、入学を希望する生徒を対象にした体験授業を行っています。)

多くの私立学校で、入学を希望するお子さん向けの学校見学会などを行っていることを考えると、シュタイナー学園の方針は異質に映るかもしれません。「何をそんなに勿体つけるのか」と思われる方もいるかもしれません。

もちろん、それにはちゃんと理由があります。

まず「出会いを大切にしたい」ということが挙げられます。「子ども達には、新鮮な気持ちで“学ぶ楽しみ”を持って入学してほしい」という願いが、私達教師にはあります。各学年の教室では、美しい黒板絵や授業で描いた水彩画など、これから学ぶ様々なものごとを見ることができます。

それら教室で目にできるものは、大人の方……入学を検討されている保護者の皆さまには、ぜひとも見ていただきたい素晴らしい宝物ですが、これから入学する子ども達、とくに初めて小学校に上がる新一年生には、“秘密の宝箱”として入学のその日まで大事にとっておきたいのです。

初めて出会う、初めて見る、初めて聴く、初めて触れる……その時の「わあーっ!」という驚きと感動を大切にしたいのです。「これ知ってる、見たことある、やったことある」という場面には、新鮮な驚きや感動は生まれづらいのではないかと感じます。

つぎに「子どもに判断を委ねない(大人が責任を持って決断する)」ということが挙げられます。

シュタイナー教育は「自由への教育」を掲げ、「真に自由で自立した人間を育てるための特色あるカリキュラム」を標榜していることから、「何でも子どもの好きなように自由にさせる教育」と捉えられがちですが、実はそうではありません。「真に自由で自立した人間」の基礎を築くため、低学年の頃はとくに、ご家庭で守ってほしいこと、大切にしたいことなど、いくつかの制約があります。ここでは詳細は省きますが、場合によっては少し窮屈に感じることがあるかもしれません。

私達大人は日頃から子どもに判断を委ねてしまいがちです。「晩ごはん何食べたい?」なんていう些細な問いでも、大人の期待に応えるべく、子どもは小さな頭で必死に考えて(判断して)、最善の答えを出そうとします。この「必死に考える(判断する)」という些細なことが、子どもの大事な学びの機会を奪ってしまうこともあるのです。

シュタイナー教育では「リズムある生活」を大切にしています。朝起きてから眠りにつくまでの一日のリズム、月曜から日曜までの一週間のリズム、一ヶ月のリズム、春夏秋冬・一年のリズム……日々の生活の小さな積み重ねが習慣となり、心地よいリズムが「安心感」を生み、自然の周期に沿って健やかに成長することができるのです。

子ども達の生活は、川の流れのように淀みなく流れていくことが理想です。その流れの中にこそ「安心感」が生まれます。ところが「何食べたい?」「どこ行きたい?」「どれがいい?」「どうしたい?」と、常に問われ続けていると、子どもは「何でも自分でジャッジしなければ!」と無意識のうちに緊張を強いられ、「安心できる感覚」さえ奪われてしまいます。

ここ数年、「待つことができない」子どもが増えていると言われています。教師の指示を待てずに、自己判断で先走ってしまう子どもが多いようです。教師の指示を聞いていなければ、授業に集中することも難しいのかもしれません。常に「先へ、先へ」と意識が先行し、「今、ここ」にとどまることができない子どもが増えているのでしょうか。

シュタイナー教育のカリキュラムでは「聴く」ということを重視しています。音楽の授業に限らず、すべての教科・すべての授業で、様々な音に耳をすませ、先生の語るお話にじっくり耳を傾けるという体験を重ねています。ところが最近、以前と比べ子ども達の「聴く力」が弱くなっているような気がします。この十数年で私達が接する情報量は倍増し、以前より世の中が騒がしくなった影響もあるでしょう。

一方で常に大人から問われ続け、「何でも自分でジャッジしなければ!」と先走ってしまう状況が、「安心して待つ」「安心して聴く」という機会を奪ってしまっているのではないかと思ったりもします。「待つこと」も「聴くこと」も、子どもの中に「安心できる感覚」が芽生えて初めて成り立つことなのかもしれません。

だからこそ、「晩ごはん何食べたい?」という些細な問いはもちろん、「この学校どう思う?」という重い問いも含め、なるべくお子さんに「問う」機会を少なくしてほしいと思います。

学校選びはお子さんの人生を左右する大事な選択です。子どもが喜びを持って楽しく学べる学校は、本当にここなのだろうか、親の勝手な想いを子どもに押し付けてはいないか……お子さんの将来を真剣に考えれば考えるほど、不安になりますよね。真面目で熱心な方ほど、あれこれと悩まれることでしょう。

だからこそ、あえて言わせてください。お子さんのことは保護者の皆さんが一番よくわかっています。お子さんにとって、どんな環境が良いのか、どんな学校が合うのか。どうか小さな子ども達に、「学校選び」という人生の大きな選択を預けないであげてください。大丈夫、12年経てば、子ども達は自分の意志で、自分の人生を選べるようになります。シュタイナー学園のカリキュラムは、その「意志」をしっかり育てるために、1年生から12年生まで丁寧に組み立てられています。

どうぞ自信を持って、お子さんに一番ふさわしいと思われる環境、学校を選んであげてください。選択の結果を引き受ける覚悟を持ってください。その結果、シュタイナー学園を選んでいただけたなら、これほど嬉しいことはありません。けれども「ここの学校じゃないわ」という決断も、一教育者としては応援したいです。

さて今週末1月13日(土)、シュタイナー学園では「新入学・転入学のためのシュタイナー教育勉強会」(2018 年度入学願書配布)を行います。シュタイナー学園への入学・転入をお考えの保護者の皆さまにとっては、今年度最後のチャンスです。まだ迷われている方も、まずはお越しいただき、ご自身で見て、聴いて、触れて、私達の教育を感じてみてください。それからどうするか決められても、遅くはないはずです。皆さまとお会いできることを、楽しみにしております。

白田拓子(高等部教員)