学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2017.09.19

教育

オイリュトミーの不思議

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.10  2017.09.19

出会いの不思議

オイリュトミー、と聞くと、たいていの人が、?と問い返したくなりますよね。ところが、この名前を知った途端、これだ!と思ってしまった人もいたのです。わたしです。

 37年前のその出会いが、私が半生をオイリュトミストとして生き、そして日本で最初のシュタイナー学校に30年携わることになった始まりでした。

 小さな頃から、風が吹くと舞い、音が響くと踊っていました。でも、バレエでも伝統芸能でもない、何か別の動きを習いたいと思っていました。思い続けて大学生に。世界と人生の根本の問いにとらえられ、哲学の世界に足を踏み入れました。

考える作業で頭があふれそうになり、考えることが、心も行いもとらえるところまでいかないとダメだと思い至った時です。本の中でオイリュトミーという動きの芸術があることを読み、それを生み出したのが、シュタイナー教育と同じ、ルドルフ・シュタイナーの人間観だとわかりました。

「発声すること、言葉を語ること、音楽を歌うこと」がオイリュトミーの動きの源泉で、発声器官が行うことを全身の動きで空間にひろげていく・・・という説明で、「あ、これが私のやりたかったことかも」と予感した半年後に、オイリュトミーの舞台を実際に観、講座に参加する機会がやって来ました。ドイツから二つの舞台グループが時を前後して、日本でシュタイナーの思想を学ぶグループの招きで来日したのです。日本で初めてのことでした。

入学試験(?)の不思議

幼稚園から大学まで、自分の環境と成績によって、行く学校が決まってきました。大学などは自分で選んだようで、実はかなり他動的だったと思います。これを一生続けるのか、と自問自答して、そうだ、という内心の声だけが決め手となって選んだのが、オイリュトミー学校でした。

 まず、最初に参加した講座の休憩時間に、私は、近くにいた優しそうなオイリュトミストの人に話しかけ、大学時代に取り組んで出来るようになっていたドイツ語で、学校のことをたずねました。そこに、舞台を率いる先生が歩いてこられました。存在の大きな素敵な方です。優しいオイリュトミストの人が、「この女性が入学を望んでいる」と私のことを話すと、すっと私に近づき、「そう、それならいらっしゃい」と私の目をみて微笑み、その場を離れていきました。「え?」と魔法にかけられたように立つ私。とにかく、その晩、学校宛てに入学希望の手紙を書き始めました。ところが、どういうわけか、ペンが動かない。しばらくそのままにしておくことにし、2か月後にもう一つの舞台を観ました。感激の中で私は一気に、そちらの校長先生宛の手紙を仕上げて届け、ほどなくその方と面談をすることになりました。

最初の問いは、「さあ、あなたは私に何を聞きたいですか?」でした。私は、すぐに問い返していました。「オイリュトミー学校に入学したいのです。私は何をしなければなりませんか?」

 すると、先生は手で膝を打ち、「とてもよい最初の問いです。」そして、「来年の9月から始まる新しい学年にいらっしゃい。」…え、え?オイリュトミストって、観てその場で決める人?思わず「これで・・・」と言葉に詰まると、「これでいいのです。私はあなたに会って決めました。でもこれからは、導く力も、先へ進むことを妨げる力も、両方が来ますよ。」

それまで味わった、どの入学試験にも似ていない場で、厳しいけれど深い信頼が、世界から私に渡されたようでした。

人が変わる不思議

おことわりしておきますが、このエピソードは、いわば芸術の道への弟子入りのような、とても特殊な場でのことです。シュタイナー学校の入学面談でしたら、いくつかの手順を踏みますし、私も実際のオイリュトミー学校入学のためには、何種類もの書類を揃えました。

 でも、あの時以来、「私はオイリュトミーの道を進みながら、自分を変えていきたいか?」という問いは、やむことなく続いています。オイリュトミー学校の課程は4年間。私のクラスは20代から30代の多国籍の男女20名から成っていました。種々多様な個性と経歴の20人が、4年後に、どんなふうに変わったか、それは、語れば物語になってしまう、別の不思議です。4年間、昨日何をしたかよりも、これからどうするかが問われました。困難、失敗もまた、新しい芽が身を持ち上げる土壌となることを学び取りました。この体験とオイリュトミーがなかったら、私はシュタイナー学校づくりを続けられなかったでしょう。

「この4年間って、大人のシュタイナー学校の12年間みたいだな」と言った人もいます。その人がよりその人らしく、世界と共鳴できるようになる、という意味でしょう。(もっとも、体も心も成長のさなかにある子どもたちと違って、大人の場合、自己教育が不可欠ですが)

 オイリュトミーは、毎日の生活を、視野の広い、内的な変容に満ちたものにしてくれます。人の素のままの動きは美しい。

音楽や言葉ともっとなかよくなりたい人

生き生きした流れるような動きを身に着けたい人

まず、身近なところで体験してみませんか?

はた りえ
オイリュトミスト・日本シュタイナー学校協会代表