学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2020.12.23

シュタイナー学園のクリスマス劇

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.96  2020.12.23

秋が深まりつつある11月に入ると、教員たちは「生誕劇」の準備を始めます。「生誕劇」といわれる劇は、アダムとエヴァの楽園追放劇である「パラダイス劇」、キリストの誕生と羊飼いたちの物語である「キリスト生誕劇」、誕生したキリストを東方の三博士が訪ねる「三賢王劇」の3部からなります。

この劇はルドルフ・シュタイナーの学生時代の師であるカール・ユリウス・シュレーヤーが19世紀ハンガリー西部のドイツ語圏の小農村オーバーウーファーで長年行われていた農民劇を取材したものに由来します。彼が取材し、収集した劇にシュタイナーが手を入れ、現代に受け継がれています。この劇の由来は遠く14、15世紀までさかのぼることができます。当時教会ではラテン語が使われていたので、キリストの誕生を農民にもわかるように土地の言葉で始められたといわれています。村の若者たちが、劇を演じるために身を清め、準備して演じてきたそうです。そんな古い由来の劇ですが、今では世界中のシュタイナー学校をはじめ、様々なシュタイナー関係の施設で上演されています。

シュタイナー学園では、三鷹でのNPOの時代に「キリスト生誕劇」の上演を始めました。その当時すでに横浜では、土曜クラスを行っていた教員や保護者たちによって、生誕劇は始められており、その方々の経験を参考に学園でも子どもたちのために劇の上演を始めました。はじめは前半のマリアとヨゼフのやり取りとキリストの誕生まで、次の年には後半の羊飼いたちの部分まですべてを上演しました。それ以来毎年クリスマスの時期になると、この劇は教員たちからのプレゼントとして、2学期の締めくくりに上演されてきました。この劇では、出演者全員がはじめから終わりまで舞台上にいて、出演していないときは舞台横のベンチに座って劇の進行を見守ります。そして場面ごとの転換では、出演者全員が歌をうたいながら、客席を回ります。そのほか、話の進行の中にも歌がちりばめられています。

教員たちにとって約1時間半強のこの劇を忙しい日々の合間を縫って練習することは、とても大変なことです。セリフに加え、進行を支える歌や動きを覚えながら(マリアやヨゼフは彼らだけの特別な歌、そして羊飼いたちだけの歌もあります)、お互いの呼吸を合わせていく。上演する教員たちにとってお互いの時間をすり合わせて、練習の時間を捻出することが一番大変かもしれません。それでも、この劇を子どもたちに見せようという大きな目標のために教員たちは一致団結してこの劇に向かいます。そして、劇終了後はすがすがしい充実感に包まれるのです。

私たちにとっての一番のプレゼントは、子どもたちの一生懸命に集中して見入る姿とその喜ぶ声です。毎年同じものを見て飽きないのだろうかと疑問に思われるかもしれませんが、子どもたちは年齢とともにその楽しみ方が変わってゆきます。1年生が初めて見るときは、劇の展開や面白い羊飼いのやり取りに一喜一憂し、なかには知っている先生が出ていることを喜んだりします。2年生以降は、ストーリーは知っているので、次に来る怖い場面、怖い宿屋が出てくるところや楽しい場面を楽しみにして待ち構えています。彼らのお話の世界に入っていく力には敬服するばかりです。教員たちはそこから力をもらうのです。子どもたちにとっては、他の祝祭とともに1年の巡りが確実にやってくることがとても大切なのです。それが彼らにとっての魂の栄養になるからです。

キリスト教文化圏でない日本で、なぜこの劇を行うのかと問われたことがあります。この劇のもっている普遍的な何か、キリスト存在の誕生という人類にとっての普遍的なテーマが、ここまで上演が続いている理由かもしれません。子どもたちが成長していく中で、学業はもちろんのことですが、彼らの魂の成長にとって、季節ごとに行われる祝祭はとても大事な栄養なのです。マリアやヨゼフによって貧しくも大切に迎えられるキリストは、私たちのなかに生まれる大切な自我の似姿です。そしてお祝いにやってくる純朴な羊飼いたち。彼らの純粋さは、大事なものは大切に大切に守っていかなくてはならないということを、あらわしています。とても素朴な劇ですが、根底に流れているものは私たちに内面を見つめる大切さを教えてくれているように思うのです。

ライター/教員 根岸初子