学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.11.08

教育

北の大地でシュタイナー教育に触れる

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.170 2023.11.8

8月下旬、研修のために5日間、「学校法人北海道シュタイナー学園(初等部・中等部)/NPO法人シュタイナースクールいずみの学校(こどもの園・高等学園)」(以下、いずみの学校)へ行ってきました。
 
新千歳空港からJRに乗り換え、最寄り駅を目指して気持ちよく電車に揺られていると、見えてくる外の景色は親しみのある藤野の自然とはまた違った、広大な緑の風景が広がっていました。JR室蘭本線の豊浦駅から徒歩20分ほどの場所にあるいずみの学校は、優しい風に囲まれていて、空気の綺麗ななだらかな丘の上にあります。
 
この夏、北海道では例年にない酷暑に見舞われ、授業を考えるときも生活空間を整えるときも、試行錯誤の連続だ、というお話でした。初日が様々な要因を踏まえて臨時休校になり、どの教室にもエアコンのない北海道の現実を痛感しました。
 
臨時休校から一夜明け、初日となった火曜日に、新学期の集いが12学年合同で行われていました。そこでは転入生が紹介され、温かく迎えられています。各学年平均10名程のアットホームないずみの学校の雰囲気が伝わり、心が和むひと時でした。
 
12年生のカヤック合宿の見送りに行きましたが、牽引車にカヤックが詰まれ、ライフジャケットの準備がされて、バックパックを慣れた手つきで扱う12年生の姿を見ると、アウトドアをこれまで学んできた様子や、いずみの学校でのアウトドアの取り組みが少し伝わった気がしました。

いずみの学校ではアウトドアが専科に組み込まれており、初等部であれば週に2コマ、季節に合わせて自然の中で遊ぶ体験を重視しているそうです。雨が降ったら授業は中止、となるのではなく「雨に濡れに行く」と聞いたときは驚きました。中等部では学期に1回のペースで山登りなどがあり、学年が上がるごとにより高度に、様々な課題を与えられて自然に挑みに行くそうです。藤野も豊かな自然に囲まれているため、ぜひそれを生かしたアウトドアを実践したいと改めて思いました。
 
いずみの学校では元中学校だった校舎を使用しているため、元小学校の校舎を使用しているシュタイナー学園と比べて「大きいなぁ」という印象がありました。土地の広さを実感する場面も多く、例えば駐車場が広い、3年生の「家づくり」の授業で建てた歴代のお家は壊さずに残すことができる、3階の10年生教室からは洞爺湖方面の景色が一望できるなどは、いずみの学校ならではです。
 
各教室の壁の色が発達段階に合わせて塗り分けられていたり、季節のテーブル(季節に合わせたしつらえ)が設置されていたり、劇の授業があったり、地域は違ってもシュタイナー教育の根幹にあるものは共通していて、シュタイナー学園と同じ居心地の良さを感じる5日間でした。
 
今回の研修では体育のカリキュラムを学ぶ、という目的がありました。4年生から9年生までの体育授業を見学したり、体育専科の先生に沢山のお時間をいただいて体育についてお話ししたりすることができました。
 
強く印象に残るのは、授業を組み立てるとき、「楽しい遊びや種目だから行うのではなく、ゲームの背景にあるものを意識することや、ゲームに入れたい要素を常に考えることが大切である」ということを教えて頂いたことです。目から鱗だった事例を挙げると、足裏を意識させたい場合、ビー玉を足で運ばざるを得ない状況を遊びに取り入れ、しかも何回もその場面が訪れる工夫のある遊びです。子どもたちは器用にビー玉を足裏で掴んだり床に置いたりして、熱心に運んでいました。
 
私はこれまでシュタイナー学園で幾つもの遊びを先生方に教わり、それが面白いくらいに目の前の子どもたちにマッチすることが驚きでした。しかしそれらの遊びに依存していたことに気づき、反省しています。これからは今まで教わった遊びも大事にしながら、目の前の子どもたちにどのように成長してほしいかを長い目で見て、それを基に様々な要素を取り入れてゲームを考えられる体育教師になりたいです。
 
他のシュタイナー学校で同じ専科を担当されている先生の授業を見たり、話をしたりすることで、視野も広がり、子どもたちと向き合うための大きな糧となりました。今後も各地の学校でたくさんの出会いをしていきたいです。
 
ライター/体育専科教員 木原 希