学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2023.02.01

子ども

シュタイナー学園の子どもと習い事

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.150 2023.2.1

シュタイナー教育では小さい頃からの習い事はすすめていない、と聞いたことがある方は多いかもしれません。では習い事ができないのかというと、そうではありません。学園の子どもたちは、低学年の間はゆとりをもった生活リズムを大切にしたり、学校に慣れることに時間をかけたりと、習い事以外の時間を大事にするよう心がけますが、成長の様子を見ながら、担任の先生と相談し、ふさわしい時期に多くの子どもが楽器やバレエ、水泳など多彩な習い事を始めています。

わが家の5年生の息子の場合は、4年生から書道を、5年生からピアノを習い始めました。ふだんはめいっぱい体を動かし友達とにぎやかに過ごしていますが、書道になるとお手本を見ながら筆先に自分の全てを集中しています。発散するパワーと同じくらい集中するパワーもあるようで、書く時間はおそらく本人も心地よいのでしょう。書道教室だけでなく、家でも気が向くと道具を取り出し書いています。

シュタイナー学校の授業は、体を動かすような「拡散」の時間と、授業中に先生の話を聞くような「集中」の時間をリズミカルに繰り返すのだと先生からよく聞いてきました。小さい頃は拡散しっぱなしで疲れ切ってしまうこともありましたが、成長するにつれてそうした極端な姿は見なくなりました。息子が家でも書道に向かうのを見ると、学校での集中と拡散のリズムが本人の中に根づいているのかもしれないと思います。

ピアノは本人が決心するまでに随分時間をかけていました。友達がピアノを習い始め、見様見まねで一緒に弾くのはとても楽しそうでしたが、「僕は習わないよ」と言っていました。友達には教わるけれど、習わないと言い続けること1年。5年生になる春休み、とうとう「習ってみようかな」と言い出しました。

習い事を始める時には学校での様子を見つつ、担任の先生と相談します。その習い事が子どもの成長に良い働きかけになるかどうか、一緒に考え背中を押してもらうと、親も安心して教室の門を叩くことができます。

息子の様子を見ていると、習いたいという気持ちが雪のように降り積もるのを待っているようでした。時間をかけて自分の気持ちを確かめ、一度気持ちが固まれば、後はそりで滑るようにスイスイと自分のペースで練習に精を出し始めました。うまく出来ない時には物に当たったり文句を言ったり大騒ぎですが、イライラするのも落ち込むのも、思いのほかうまく出来て喜ぶのも新しい経験です。冬には小さな発表会があり、初めて人前でピアノを弾きました。緊張でカチコチになりつつも、なんとか一曲弾ききった彼は、また新しい自分、今の自分の力に気づくことができたのだろうと思います。

学園の子どもたち、特に高等部の生徒が、音楽でもスポーツでもそれぞれ身につけてきたものを発表する姿を見ると、非常に自由だなという印象を受けます。こうあらねばという形を目指すよりも、その活動を通して自分を表現しているように感じられます。息子も高学年になり、思春期を前にしたこの時期に、習い事を通して自分と向き合えるのはちょうど良いタイミングだったと思います。一つひとつの経験が、彼が自分を知り、信じる力につながっていくと思いながら、難しい字や曲に奮闘する背中を眺めています。

ライター/保護者 木村未来