学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2024.01.24

教育

シュタイナー学校教員養成講座 1年目を終えて

学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.175 2024.1.24

2023年3月からスタートしたシュタイナー学園主催の「シュタイナー学校教員養成講座第1期」。シュタイナー学校の教員を目指す皆さんが、週末に集中して学ぶ2年間のコースがまもなく2年目に入ります。今回は福山大学・広島大学で教鞭を取る松本陵磨さん(過去の卒業生インタビューはこちら)に講座についてリポートしていただきました。


「主観や感情を持ち込まず、目視できる事実のみを観察してください」-ラファエロの「システィーナの聖母」を客観的に観察することから始まった講座ですが、早くも1年目が終わりました。
 
大学生から60代までの幅広い年齢層の男女が集まり、お互いさまざまな目的を持って、月に1度のペースで学び舎に足を運んでいます。受講生のバックグラウンドも多様で、公立学校などで教壇に立つ教員、インストラクター、経営者、ビジネスパーソン、大学生、他のシュタイナー教育機関の関係者に加え、学園の保護者、卒業生など多岐に渡ります。
 
朝9時から始まる講座では、シュタイナー教育の基盤となる人間本質の探究について『一般人間学』、『神智学』、『自由への哲学』(三作共にシュタイナーの著書)を通し頭を駆使する学問から始まり、オイリュトミー(※1)やボートマ体操(※2)を通して身体全体を使った学びが続きます。オイリュトミーを行う過程で空間認識との関連性に気がつき、社会における空間認識、すなわち他者と自分との関係性を理解する学びが含まれていることを実感しました。

※1)オイリュトミー:シュタイナー学校の芸術教科で、言葉や音楽を身体を通して表現する運動芸術

※2)ドイツのシュタイナー学校の体育教員ボートマ氏が考案した体操
 
午後は、手の仕事や彫塑、フォルメン(※3)といった活動とともに、郷土学や動物学、言語造形などの科目を実際の生徒の視点で学びつつ、シュタイナーの教育哲学を実践に落とし込む具体的な教授法や理論などの解説を受けます。

※3)形を形成するときの動きの道、軌跡を体験する芸術体験
 
講師の先生方の学園での経験や、世界各国のシュタイナー学校教員養成校でのエピソードを聴くことができることも魅力のひとつです。また、夏には日本シュタイナー学校協会主催の連携型教員養成講座にも参加しました。他校の受講生との交流を通じて、異なる教員養成講座に属していても、シュタイナー教育の学びの核心は同じであることを実感しました。
 
教員養成講座の受講生限定の学園での授業見学では、中等部の生徒たちとともに一日を過ごし授業の様子を観察しました。生徒たちは単なる「受講者」にとどまらず、教員と協力して授業を創り上げる姿勢を持ち、おそらく無意識のうちにも授業の形成に積極的に貢献している様子を目の当たりにしたことが、非常に強い印象として残っています。
 
私たち受講生は、日々の仕事や家庭生活、そして学業という日常の中でこの講座を受けています。グループチャットを活用し、欠席や遅刻の事情、課題の確認などについて情報を共有しつつ、最寄り駅までの相乗りやランチの共同購入など、日々の小さな協力を通じてお互いの負担を軽減し合っています。このような助け合いの雰囲気が、受講を続けられる一因でもあるように思います。
 
シュタイナー教育を「舞台」に例えるならば、保護者として観客席から上演を見守っていたり、生徒役の役者として舞台上に立っていたり、また、台本を読んで上演内容に若干精通していたりと、受講生の多くは何らかの形でこの教育に触れてきています。しかし今、私たちはこの教員養成講座で、舞台監督や演出家でもある「教師」としての役割を学ぶとともに、シュタイナー教育という舞台そのものの構成要素や、舞台裏に隠された「仕掛け」について学んでいます。
 
2年目には、ひとつでもよいので舞台の装置を操作し、その機能を試してみたいと思っています。先生方が十分な休養を取ることができているのか気になるところですが、3月から始まる講座の2年目を心待ちにしています。
 
ライター/受講生 松本陵磨