2024.03.20
自分を認め、世界とつながっていく力をもらった
卒業生コラム 第22期生 淺井英叙さん(後編)
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.179 2024.3.20
11年生での航海実習を機に船乗りを志し、現在航海士として働かれている淺井英叙さん。高等部からシュタイナー学園に入り、変化と成長があったという淺井さんの今までのお話を伺いました。
高等部では興味のあることに打ち込んでいたとお聞きしました。
シュタイナー学園に入り学校生活を楽しめるようになると、自然と色々なことに興味が湧くようになりました。そのひとつがフランス語です。独学で学んでいましたが、坐禅をしに通っていた鎌倉の円覚寺で、フランスにルーツを持つ女の子と友達になり、その子の親戚が通っていた縁で、パリのシュタイナー学校を紹介してもらえたのです。交換留学生として3ヶ月滞在しました。満足な語学力がないまま行ったので必死でしたが、ホームステイ先の男の子と行動しながら、みんなの会話についていこうとする間にいろんな出会いや経験ができ、すべてが新鮮で楽しい時間でした。その後交換相手の男の子が今度は僕の家にホームステイしながら藤野のシュタイナー学園に3ヶ月通いました。港区から藤野まで毎日通うのは大変だったと思いますが、日本を好きになってくれて嬉しかったです。
シュタイナー学園では長距離通学は推奨されていませんが、高等部だったので学校と相談の上、電車で通学していました。長い通学時間には楽しみがあり、毎朝会う46歳くらいのアメリカ人男性に、ある時声をかけたことがきっかけで友人になりました。そのうちピザパーティーに呼ばれたり、呼んだりと家族ぐるみで付きあうほど仲良くなりました。彼との会話は楽しく、英語や外国語により興味がわき、話す度胸がついたのだと思います。
大きな影響をうけた実習もあったそうですね。
11年生の航海実習です。事前に海の歴史や船のこと、ロープワークなど学んでいた時は未知なるものへのワクワクはありつつ、そこまで大きな体験になるとは思っていませんでした。ヨットと帆船で3日間かけて静岡県の沼津港→清水港→松崎港と進み、また帰ってくるというルートを、海図を見て位置を確かめながら航海するのですが、ヨットに乗り風を浴び海を走った瞬間、衝撃を受けました。「世界を回りたい!海に出たい!」と海の仕事がしたいという未来のイメージも持ちました。
12年生の集大成のひとつである卒業演劇では主役も演じられたそうですね。
主人公が自分に似ている気がしたんです。あんなに集中してみんなでひとつのことに向かっていくことってなかったと思います。「生きている!」と感じました。もうひとつの集大成である卒業プロジェクトでは海とヨットをテーマに取り組みました。高校生活をやりきって学園を卒業した後、航海士と機関士の国家資格を取れる海上技術短期大学に進学しました。授業・実習・授業・実習と詰め込まれましたが、充実していました。資格をとり卒業し、今は貿易会社で航海士としてオイルを運んでいます。
夢だった海の仕事につかれたのですね。
より大きな船の操縦をするための資格の勉強も続けています。航海士の資格は1級から6級まであり、大学卒業時は4級でした。今は2級の勉強をしています。働きながら勉強を続けるのは大変なこともありますが、やりがいを感じていますし、仕事が楽しいです。
最後に、シュタイナー教育で得たものはなんだと思いますか?
自分を自分で認める力、だと思います。シュタイナー学園に入るまで、人と比べ、自分を認めることができませんでした。自分のことを認められるようになって、初めて外の世界にも興味が持てるようになるのだと思いました。自分を認め世界とつながっていく、そんな力をもらったと思っています。
世界に興味を持ち、世界とつながっていく行動力と実行力に溢れた淺井さん。その力は自分を認められ初めて花開いたというお話が印象的でした。淺井さんのこれからのご活躍を楽しみにしています。
ライター/保護者 中村暁野