学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2024.12.11

卒業生

担任の先生から誕生日に贈られた「詩」、今の自分に繋がることが書いてあり心に響く

卒業生コラム 21期生 黒川朔太郎さん(前編)
学校法人シュタイナー学園 ニュースレター
VOL.198 2024.12.11

現在、北海道の小樽市で寿司職人見習いとして働いている黒川朔太郎さん。在学中は藤野の川や湖で魚釣りや自然遊びに明け暮れ、卒業後は弓道に夢中になりました。黒川さんは初等部の頃にてんかんを発症。学園での生活を送りながら、自分自身と向き合う日々だったそうです。そんな黒川さんに、子ども時代から現在までのお話を伺いました。

後編はこちら



シュタイナー教育との出会いを教えてください

 
はじめは、シュタイナー教育を取り入れた幼稚園の未就園児クラスに通っていたそうです。母が子育てを通してシュタイナー教育に出会い、町田市にあった「つくしんぼ幼稚園」に入園しました。オイリュトミー(※)も行う幼稚園で、お散歩が好きな子どもだったそうです。

シュタイナー学園入学と共に、家族で藤野に引っ越して来ました。覚えているのが、ひとりの子が泣き出すと、自分も続けてしくしくと泣きだしたこと(笑)。極度の緊張からなのか、とても記憶に残っています。

※オイリュトミー:シュタイナー学校の芸術教科で、言葉や音楽を身体を通して表現する運動芸術。
 
印象に残っている授業やエピソードはありますか?

たくさんありますが、誕生日に担任の先生からいただいた「詩」が特に印象に残っています。子どもの頃は嬉しいだけで詩の内容はよく分かっていなかったように思いますが、大人になって読み返すと、今の自分に繋がることが書いてあり感動しました。今も心に響くものがあります。

初等部での授業では動物学が印象に残っています。当時鳥が大好きだったのでエポックノートにワシを描けるのが嬉しかったことを覚えています。

学校外では、家のすぐそばに川があったので、釣り好きの父に連れていかれる間に自分も釣りが大好きになりました。近所の空き地から篠竹を切ってきて竹に糸と針をつけた即席の竿を使うところから始まって、釣りに夢中になりました。藤野には川も湖もあるので、魚も種類が豊富です。釣り好きの友人たちと集まって魚を釣って食べたりもしていました。テレビやゲームなど電子機器とは無縁の生活だったこともあり、本当によく山や川で遊んでいました。楽しかったです。

また、授業などとは別のエピソードになりますが、初等部1年生の頃にてんかん発作を発症して倒れ、入院しました。初めての大発作で人工呼吸器を使用したそうです。この発作以降、薬を服用しながら生活することになりました。
 
それは大きな出来事でしたね。学園生活は変わりましたか?
 
学園生活でも、何度か発作を起こして教室内で倒れることがありました。クラスメイトや先生が冷静に対応してくれていつも当たり前のように気づかって接してくれたことがありがたかったです。学園のカリキュラムの中には、パラグライダー実習や航海実習、福祉実習などがあります。実習中に発作を起こすことだってあるかもしれないのに、こちらにその心情を悟られないように、けれどしっかりサポート体制を整えながら、様々な体験を積ませてくれたことには感謝しかありません。

校外学習で外を皆で歩いている時、鷹のような鳥が飛んでいたので空を見上げていたら、後ろから先生が発作の前兆と勘違いして走ってきたことがありました。当時から本当に守られていたんだと思います。また、両親も合う薬を共に模索しつつ、私を信じて様々な体験させてくれたことにも感謝しています。

けれど、心の葛藤面ではもちろん色々ありました。初等部の頃はあまり感じていませんでしたが、思春期を迎える学年になると、みんなに対して「迷惑をかけている」という気持ちや、「どうして自分だけこんな大変な目にあわなければいけないんだろう?」という想いも出てきました。そんな想いを抱える中で、転機になったのが北海道にある「べてるの家」での3週間の福祉実習でした。



ライター/自主クラスことりさん保護者 林 亜沙美