学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2019.08.07

卒業生

たくさんの先生から愛をいっぱい頂いたことで自分への自信にも繋がっています

卒業生コラム 第14期生 丸山リサさん(後編)

丸山リサさん】
シュタイナー学園第10期卒業生の丸山リサさんは、もうすぐ2歳の息子さんを持つお母さんです。母親として子どもと接する日々の中で、子どもの頃からの夢のため、現在珈琲の焙煎について学ばれている丸山さん。前編ではのびのびと過ごしたシュタイナー学園での幼少期について伺いました。後編では学園を卒業し自分の夢に向かって動き出してからのお話を伺います。

前編はこちら


卒業プロジェクトでお菓子の歴史とレシピを発表され、卒業後はどんな進路に進まれたのですか?

将来自分のカフェをひらきたいという小さい頃からの夢のために、製菓学校に通いたかったのですが、家の事情もあり、当時すぐに進学することは難しかったんです。なので、自分で学費をためようとアフタヌーンティーというお店で働き始めました。そこで8ヶ月ほど働いた時に『パティスリー・サダハル・アオキ・パリ』のケーキに出会って、見た目の美しさに衝撃を受けました。パティシエールとして働きたかったのですが、製菓学校卒業生しか募集していなかったため、接客でもいいから、と入らせてもらったんです。ケーキひとつひとつが高級で、接客も値段に含まれている、と言葉遣いや動き方、身だしなみなどお店で接客の楽しさ、厳しさも共に学びました。お店の二番手に登り詰め、熱意も伝わって厨房にも入っていいと言ってもらえるようになったのですが、大手のケーキ店なので、機械で作っている部分も多く、いずれ自分のお店を開くとしたら手作業で作るのだから、お菓子作りの基礎を学べる個人店で働こうと思い、自分の中で『日本一のパティスリー』を探すため、派遣会社に勤めながら半年ほど食べ歩きをしました。そして自分にとって『日本一のパティスリー』に出会い、働かせてほしいとお願いしました。

行動力がすごいですね。どうしてそのお店に魅かれたのですか?

ケーキが綺麗で、味の組み合わせがパリに近かったんです。『サダハル・アオキ』で目が肥えていたので、クリームのちょっとのヨレやフルーツの断面も汚い、と思うようになっていたのです。そのお店はとにかく綺麗で、それをすべて手で作っていると思ったら、ここで学びたいとワクワクしました。あとは、テイクアウトだけでなくお店で食べられるスペースがあって、そのお店の外観、雰囲気がよいことも理由でした。人気店なので応募が多く、入社二年待ちとも言われるほどのお店でした。面接時、シェフと直接お話をし、沢山の厳しい条件を聞かされました。具体的にはお給料が低い、お休みが少ない、かなりハード、などなど10ほどのハードルがありました。幼い頃からパティシエールを目指し、覚悟は出来ていたので全てを仕事に捧げる想いでお店の近くに引っ越しました。1年目は接客だけ、2年目は早朝厨房に入り、オープン後は接客、3年目からやっと厨房のみで働けると聞かされていたのですが、わたしは半年くらいで厨房に入らせてもらえるようになりました。一番忙しい時は朝5時から深夜1時まで、週6日働くような生活で、想像以上に大変でした。

そんなハードな環境で心が折れることはなかったのでしょうか?

絶対ここでやる!と心に決めていたので、踏ん張っていましたが、わたしが上に登り詰めたらもう少し働きやすい環境に変えてやると思っていました(笑)。
一日しかない休みにも午前中だけお店に行ったりしていました。そうでもしないとなかなか新しいことを教えてもらえなかったんです。1年間でとてもいいポジションを任せてもらえるようになった時、妊娠がわかりました。

パートナーの方もシュタイナー学校卒業生の方と聞きました。

もともと東京シュタイナーシューレでは一緒で、その後シューレが藤野に移転したタイミングで夫は東京賢治シュタイナー学校に転校したので、友達ではあったんです。共通の友人に連れられて食べにきてくれたことがきっかけで再会しました。子どもが出来ても数ヶ月は働こうと思っていたのですが、とてもハードだからとシェフが止めてくれたこともあり、退職することになりました。子どもを産むことに迷いはありませんでしたね。

お子さんはもうすぐ2歳とお聞きしました。

生まれてしばらくは、育児に専念していたのですが、今年の春から保育園に通いだしました。高尾にある『おひさま子どもの家』というシュタイナー学園が運営する保育園です。夫もわたしもシュタイナー教育を受けて育ち、自分の子どものことを考えた時に、いろいろな園を見たけれど、『やっぱりシュタイナー教育っていいな』と思える部分に改めてたくさん出会っています。触れるもの、口にするもの、聞く音やお話、先生の眼差し。あたたかな環境で、子どもがのびのびと楽しそうに保育園に通えるからこそ、安心してわたしも仕事を再会できました。

今は何の仕事をされているのですか?

今は自家焙煎をしているコーヒー店で働いています。子どもが小さいので限られた時間しか働けない中で、コーヒーについても学びたいと思いました。いずれ開くカフェでは細かなところまでこだわりのあるお店を、と考えていて、庭で育てた野菜や果物をつかって、綺麗で色鮮やかなフランス菓子がならぶ一軒家のお店にしたい…と思い描いています。お店が持てたら仕事を学ぶ機会となる職業実習先として貢献できたらなあ、なんてことも思います。

丸山さんがシュタイナー学園で得たものはなんだと思いますか?

『やりたい』と言ったことに対して先生たちはどんなことでも否定をせず応援してくれ、力を貸してくれました。ずっとそういう環境で温かい目で見守られて育ったので、やりたいことを見つけた時、ひるまず思いのまま向かうことができたと思います。また、たくさんの先生から愛をいっぱい頂いたことで自分への自信にも繋がっています。学園には感謝しかありません。子どもも生まれ、これからは親としてOGとして関わりながら恩返ししていきたいと思っています。


学園の中にいた時は当たり前すぎて気づかなかった、と自分が得たものについてお話してくださった丸山さん。自分の夢にまっすぐに向かいながら、お子さんや、自分よりも若い人たちのために何ができるか、したいか、ということが自然と含まれていることが素晴らしいと感じました。いつか開かれるお店を楽しみに、そして1人の母親として丸山さんの今後を心から応援したいと思います。

ライター/中村暁野