学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2020.02.25

卒業生

自分の未来はあくまでも自分で決めること、自分で判断することがすごく大事なこと

卒業生コラム 第19期卒業生 上田樹一さん(後編)

上田樹一さん】
シュタイナー学園第19期卒業生の上田樹一さんは、主に木を用いた家具や内装を制作するユニット「NIWATORI」を立ち上げ、現在福井県にアトリエを構えて活動されています。前編では自然の中で遊ぶことやものづくりが楽しくてしょうがなかったという子ども時代についてお聞きしました。後編では卒業後、自分の道を見つけ出し、進んでいった経緯についてお聞きします。

前編はこちら


高等部ではものづくりが楽しくてしかたなかったとお聞きしました。

校舎にある工具を使って、現在『NIWATORI』のパートナーである大西君といろいろなものを作りました。教室に靴箱があったらいいなと作ったり。あとは学校帰りに山に入っていって、崖を下って野宿してみたり。無茶もしたのですが、そんなこと全部がとにかく楽しかった。卒業後どうするのかということは、ずっとどこか他人事みたいに感じていました。大学への進学を考えた時もあったのですが、『大学生も楽しそうではあるな』と思った時に、そこに描く『楽しさ』には違和感がありました。自分の中で良い楽しさと悪い楽しさっていうのがあって、明確なやりたいこともないまま流れで大学に入って、その時間をとりあえず楽しむ、みたいなのは僕にとってはいやだったんです。自分は社会の中で何がしたいのかな?って、卒業後は悩みながらアルバイトをしていました。

なんとなく、で進学をしない、というのはある意味とてもストイックですね。

シュタイナー教育って一人ひとりの個を尊重していて、テストとかわかりやすい評価はないけど、逆の厳しさもあると思うんです。すべて自分次第。自分の未来はあくまでも自分で決めること、自分で判断することがすごく大事なことなんだ、と学びを通して感じてきたので『なんとなく』では決められませんでした。それで個人経営のイタリアンレストランで一年間アルバイトをしていました。社員の人より稼いでいたくらい働きつつ、やりたいことを考えていた時に、家具が作りたいと思ったんです。もともと建築にも興味があったのですが、自分で考えて自分で作れる、自分だけで完結することがしたいと思った時、家具だな、と。卒業後大西君は京都のオオヤコーヒーで働いていて、一年の間に何度か会っていたんです。それで一緒にやろうよ、ということになって『NIWATORI』を立ち上げました。ソファやキャビネットなどの家具製作から家のデッキ製作までオーダーで行っています。

学校に入ったり、どこかに就職したりするのではなく、最初から独立して仕事をはじめられたのですね。

自分たちのやりたい、という気持ちや若さ、吸収力。今やるべきだな、と思えたんです。木工もシュタイナー学園での経験があって、出来る、と思えたんですよね。新宿のビルの屋上に小屋を作ったのが最初の仕事で、人のつながりもあり、家具や内装など仕事をもらえるようになっていきました。立ち上げて1年半ほどですが、最近もう一人メンバーが加わって、『NIWATORI』は3人になりました。全員もっているものがバラバラで面白いんです。福井県に家とアトリエをかまえていますが、依頼を受けたら全国各地をまわって仕事をしています。

シュタイナー教育で得たと思うものはありますか?

自分が主体になって物事を判断していく力でしょうか。自分を貫きたい、貫ける、と思えるのは、シュタイナー学園で、先生、同級生、卒業生、保護者…いろんな生き方をしている面白い人たちに出会い、多様性と可能性を知ったからだとも思います。これからも自分を信じて、ぶれることなくものづくりをしていきたいと思っています。


自分のやりたいという気持ちを信じて、恐れることなく、道を切り拓き、進みはじめた上田さん。道なき道を進み、仕事していく中では壁にぶつかることはあるかもしれない。でも、きっと上田さんはそんなすべてを糧にして、先に進んでいけるだろうな、とお話を聞いていて思いました。小さなことも大きなことも、自分で判断し、自分を信じて、動いていく。そういった力は大人になってから身につけようとしても難しい、「生きる力」そのものに思えました。上田さんと『NIWATORI』のこの先が心から楽しみです。

ライター/中村暁野