学校法人 シュタイナー学園

活動報告

2022.08.10

卒業生

シュタイナー学園の学びを楽しみきったことが、自分と向き合う力になったと思うんです

卒業生コラム 第20期生 山口葵さん(後編

現在保育士として働きだして2年目の山口葵さん。シュタイナー学園第20期卒業生として、1年生から12年生までを藤野の豊かな自然の中で、シュタイナー教育を受けて育ちました。12年間を学びきった、楽しみきったからこそ今がある。そう話す葵さんにシュタイナー学校の思い出を教えていただきました。


高等部に上がって変化したことはありましたか?

シュタイナー学園では中間テストや期末テストなどの定期テストがありません。学年が上がるにつれて、学びに対する評価は受けるようになるのですが、先生方はその評価もテストの結果ではなく一人ひとりが向き合っていたプロセスを見てくれていたな、と思います。興味を持って自分が向き合った姿勢を評価してもらえたからこそ、学びに前向きでいられたのではないかと思います。

高等部は実習も多く行われますが、印象に残っている実習はありますか?

福祉実習です。福祉実習でわたしは特別養護老人ホームに3週間行かせていただきました。実習中、仕事のほとんどは掃除をしたり、利用者の方が過ごす場所の準備をしたり、環境を整えることだったんです。わたしは利用者の方の補助をしたり、お話ししたりできるのかと思っていたので、最初物足りないような気持ちもあったのですが、3週間実習を続ける間に、気持ちよく過ごせるように考えて環境を整える、作っていくことは人が生きていく中でとても大切なことなんだな、と気づくことができました。あの実習で学んだことは、今の保育の仕事をする上でもすごく大きな経験になっていると思います。  

実習以外で高校生活の中で印象に残っていることはありますか?

12年生で行う3大プロジェクト(12年劇、卒業プロジェクト、卒業オイリュトミー)は全部印象に残っていますが、特に12年劇が心に残っています。劇というひとつのものを、クラスみんなで作り上げる。みんなが同じ方向を向くのはすごく難しいことですが、バラバラなままでは劇ができない。意見がちがったり、ぶつかったりする中で、否定するのではなく、わかり合えないからこそみんながわかり合おうと必死で向き合った時間だったと思います。

誰かとそこまで向き合って何かを作り上げていく経験は、大人になってもなかなかできない貴重な経験なのではないかと思います。
葵さんは保育士の道を選ばれましたが、進路はいつ頃考え始めたのでしょうか?

わたしは12年生になった時に、12年の課題を楽しみきろう、と思ったんです。もちろんまわりには現役で大学進学を目指している子もいましたし、シュタイナー学園の課題と受験を両立している人もいました。でも、わたしは12年間学んできた学園の最後の1年。その最後の1年の課題に全力で取り組みたいと思ったんです。全力で取り組みたいから、卒業後のことはその後考えようと思いました。そして最後の1年を全力で取り組むことにして本当に良かった、と今も思っています。あの時やりきって得た達成感があったからこそ、卒業後に自分と向き合うことができた。シュタイナー学園の学びを楽しみきったことが、自分と向き合う力になったと思うんです。卒業後、自分が本当にやりたいことは何かと考えて、ひとつは自分を表現する演劇がしたいと思いました。もうひとつ、15歳年の離れた弟がいることもあり、子どもと向き合う保育の仕事も興味を持っていました。演劇の大学と保育の大学、両方受けて、結局保育の道に進み、今は保育士として働きはじめて2年目になります。

保育の仕事に進まれて、今は楽しいですか?

人と向き合う仕事なので、大変なことはもちろんありますが、目の前にいる成長めまぐるしい子どもたちと過ごす中で、自分に正直に、自分自身にも向き合って仕事していけたらと思っています。今後は障がいを持つ子どもたちと過ごしてみたいという気持ちもありますし、保育士として働きながらも、自分自身を表現していきたい気持ちもあります。子どもたちと共に演劇を行えるような場に参加するなど、やりたいことがたくさんあるんです。

最後にシュタイナー教育で得たと思うものはなんでしょうか?

人と比べなくていい。自分は自分でいい。他の何かや誰かを目指さなくていい。間違ったっていいんだよ、やりたいことをやってみなよ、そもそも間違いなんてないんだよ……そんな眼差しの中で、自分を認めて自分を好きでいられる力をもらった気がします。


お話の端々から、葵さんが持つ他者と向き合う力を感じました。そして他者と向き合うためには、自分自身と向き合う力がきっと、とても大切なのだとも感じました。自分と他者と、まっすぐに向き合う葵さんのこれからが、とても楽しみです。

ライター:中村暁野